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2025/05/18

様々な要因絡む高齢者の不眠、克服・治療のカギ

<身近でできる不眠改善対策>


 高齢になると、不眠に悩む方が増えてきます。高齢者は若年成人と比べて眠りが浅くなり、途中で目が覚めやすくなるため、布団に入っている時間のうち実際に眠っている時間の割合(睡眠効率)が低下しやすくなります。

2025/03/16

胃に慢性的な不快感が続く機能性ディスペプシア(FD)

<21年に診療ガイドラインが改訂>


 機能性ディスペプシア(FD)は、症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないにもかかわらず、慢性的なみぞおちの痛みや胃もたれなどの不快感・不調が続く病気です。命にかかわる病気ではないですが、罹患すると患者さんの生活の質を大きく低下させます。

2024/11/15

生きづらさの背景にあるかもしれない[パーソナリティ症]

<パーソナリティ症とは?>


 パーソナリティ症とは、「広い範囲の精神症状や多様な社会適応の困難さ、主観的苦痛を生じるもの」と定義されています。

 パーソナリティ症については診断基準がいくつかあります。米国精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM|5)では、パーソナリティーを「環境および自分自身について、それらを知覚し、それらと関係を持ち、それらについて思考する持続的様式である。

2024/05/16

うつ状態〜一人で悩まず専門医に相談を

<うつ状態とは?我慢せず早期受診が重要>


 うつ状態とは、気分が落ち込む、やる気がでない、何にも興味が持てない、集中力が低下するなどの精神症状に加えて、不眠、食欲低下、倦怠(けんたい)感などの身体症状も生じる状態をいいます。時には、実際はそのようなことがないのに「悪いことをしてしまった」「お金がない」と感じたり、体の不調を訴え続けたりすることもあります。

2024/03/15

慢性便秘症──診療ガイドライン改定

<重症化で心血管疾患リスクも>


 昨年「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が、日本消化管学会により約6年ぶりに「便通異常症診療ガイドライン2023 ―慢性便秘症」として改訂されました。便秘症の定義・分類・診断基準から病態生理、診断検査、内科的治療まで、前版以降の進歩や最新知見が盛り込まれ、便秘症の日常診療には欠かせない資料となっています。

2023/11/20

身体的な要因で生じる意識障害「せん妄」

 <認知症と全く異なる病気>

 せん妄とは、身体疾患または全身状態の変化によって起こる、興奮や幻覚、不眠、認知機能低下などを起こす「一過性の意識障害」です。代表的な症状として「ぼんやりして話のつじつまが合わない、反応が鈍い」「場所や時間が分からなくなる」「怒りっぽい、興奮する」「そこにはないものが『見える』と言う」などがあります。興奮や幻覚が目立つ過活動型と、ぼんやりした様子で認知機能の低下が目立つ低活動型に分けられます。

2023/09/21

沈黙の臓器・肝臓、早めに検査・治療を

<自覚症状なく病状進行>

 肝臓は、成人でおよそ1500gもあるヒトの臓器で最大の器官です。血液によって運ばれてくる栄養分を蓄えたり、それらを体に必要な別の物質につくり変えたり、また、血液中に入り込んだ体に有害な物質を分解し、無毒化する働きなど、重要な役割を担っており、「人体の化学工場」といわれています。

2023/05/21

「不眠症」について原因を探り、習慣を改善

<治療の基本となる睡眠衛生指導>

 日本では5人に1人の割合で不眠の訴えがみられます。そのうち日中の眠気などで生活に支障を来している場合には「不眠症」と診断されます。平均的な睡眠時間は、25歳で7時間、45歳で6.5時間、65歳では6時間程度です。適切な睡眠時間は人それぞれなので、これより短くても日中に支障がなければ問題ありません。

2022/11/19

認知症の前段階、軽度認知障害(MCI)とは?

知ってほしい、認知症の今

 2030年には65歳以上人口が全体の31%に達すると推定されています。21年の日本の平均寿命は新型コロナ感染症の影響で低下しましたが(男性81・4歳/女性87・5歳)、医学水準の発達により今後も平均寿命は延びていくことが予想されます。このような状況の中で加齢をリスクとする認知症患者が増加していくことは必然です。

2022/03/20

不眠と睡眠薬

岡本病院 鈴木 志麻子 医師


医療法人社団正心会
岡本病院
鈴木 志麻子 医師
●精神保健指定医・日本精神神経学会精神科専門医・医学博士
●医療法人社団正心会 岡本病院

札幌市中央区北7条西26丁目3番1号




不眠・睡眠障害、原因を探り治療

 なかなか寝付けない、夜中や早朝に目が覚める、ぐっすり眠った感じを得られない…といった睡眠に関する悩みを抱える人は成人の2〜3割に上ります。高齢になるほど増えますが、夜遅くまでパソコンやスマホを操作する若い世代でも目立ちます。不眠の主な原因としては、精神的なストレスの存在、うつ病や睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群など何らかの病気、薬の副作用の不眠の他、若い方の場合には人間に本来備わっている体内時計を無視した生活リズム、高齢者の場合には日中の活動性の低下や、そもそも加齢による睡眠時間の生理的な減少なども関係します。「とりあえず薬を」の前に、これらを見落とさないことが重要です。

 

睡眠薬の分類とその特徴、新薬も登場

 

 不眠の治療に病院で使用される睡眠薬は「ベンゾジアゼピン受容体作動薬/非ベンゾジアゼピン受容体作動薬(以下、ベンゾ系/非ベンゾ系)」「メラトニン受容体作動薬」「オレキシン受容体拮抗薬」に大別されます。

 ベンゾ系/非ベンゾ系睡眠薬は、不眠治療、精神疾患の治療において本邦では広く使われており、鎮静作用や抗不安作用などにより脳の働きを休ませて眠りへ導きます。ただし、健忘やふらつき、認知機能への影響などの副作用、長期使用に伴う依存性などの側面もありますので、一時的な使用にとどめる、あるいは慎重に使用する必要(特に高齢者)があります。なお、睡眠薬は急にやめると一時的に不眠が悪化することが多く(反跳性不眠)、その場合は少しずつ減量してからやめる工夫が必要です。

 ほかの2剤は比較的新しい薬で、メラトニン受容体作動薬は眠りをもたらすホルモンのメラトニンと同じような働きをし、体内時計に働きかけ、睡眠・覚醒リズムを調節して眠りへ導きます。オレキシン受容体拮抗薬は脳の覚醒を維持する神経伝達物質の働きを抑えることで眠りに導きます。これらの睡眠薬は副作用や依存性が少ないため、高齢者にも使いやすい特徴があります。

 睡眠薬は治療や生活の助けになりますが、いずれはやめることを意識することも大切です。生活習慣・リズムを見直す、睡眠関連の情報を集め実践する、医師とよく相談して副作用の少ないタイプに切り替える・量を減らすなど、できることから取り組んでみましょう。なお、「睡眠薬は怖い」と敬遠される方もおりますが、正確な知識を得て、必要な時に必要な量を使用するのであれば怖いものではないことも、ご理解いただきたいと思います。

 

健康のための睡眠習慣を

 

 最後に、質の高い睡眠のための方策をいくつか紹介します。▽毎日決まった時刻に起床▽朝日を浴びて体内時計をリセットする▽日中の適度な運動習慣▽就寝前の飲酒、喫煙、夕方以降のカフェイン摂取を控える▽寝る90分前にぬるめの入浴▽ベッドの上でだらだらとスマホを操作しない、などを心掛けましょう 

 不眠の背後にうつ病や統合失調症などの病気が隠れている場合もあります。長引く不眠とともにメンタルの不調がある場合には、早めに精神科、心療内科などの専門医を受診することをお勧めします。

2021/08/20

パニック症・広場恐怖について

岡本病院 山中 啓義 副院長



医療法人社団正心会
岡本病院
山中 啓義 副院長
●日本精神神経学会認定精神科専門医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医
●医療法人社団正心会 岡本病院 札幌市中央区北7条西26丁目3番1号






突然の恐怖に駆られるパニック症の発作

 「テスト前にパニックになる」「怖い映画を観てパニックになる」─このように何かしらの誘因があって症状が出るものはパニック症ではないというのがポイントです。つまり、パニック症は〝何の前触れもなく突然に〟交感神経症状や過換気症候群を起こす病気のことです。国内有病率は1.8%と推定され、成人女性に好発します。

 症状は「発作時」と「非発作時」の2つに分けられます。発作時の症状は、突然の交感神経症状(動悸、心拍数増加、発汗、震え、息苦しさ、窒息感、めまい)や過換気症候群です。過換気になると体内の二酸化炭素が必要以上に呼吸として排出されてしまい、血液がアルカリ性になります(呼吸性アルカローシス)。これにより、血中のカルシウム濃度が低下し、手足のしびれやひきつけなどのテタニー症状があらわれます。発作はいきなりの出来事なので「このまま死んでしまうのではないか」という恐怖を抱き、それは10分以内にピークに達するといわれています。



非発作時の症状,予期不安と広場恐怖

 

 非発作時の症状ですが、発作を何度も経験すると「また、あの発作が起こるのではないか」「外出先で発作が起きたらどうしよう」という不安が常につきまとうようになります。これを「予期不安」と呼びます。さらに繰り返し発作を起こすと、以前発作を起こした場所や発作が起きたときにすぐに助けを得られないような場所(電車、地下鉄、飛行機、エレベーター、MRI、歯医者、美容室など)を避けたり恐れたりするようになります。これを「広場恐怖」と呼びます。広場恐怖とは「広い場所が怖い」のではなく、むしろ「狭い場所」のイメージです。

 


心理・薬物療法が柱専門医で適切な治療を

 

 原因についてはさまざまな研究報告がありますが、脳のある部分(大脳・大脳辺縁系・青斑核・視床下部)に通常とは異なる変化が起こっているのではないかと指摘されています。また、神経化学伝達物質であるセロトニンの分泌異常が関与しているとも考えられています。

 診断は詳細な問診に加えて、パニック症重症度尺度(PDSS)を用います。PDSSは症状の重症度を評価する尺度で、中核症状7項目を0から4の5段階で評価します。治療は心理療法である認知行動療法、薬物療法、セルフヘルプ(自身で認知行動療法の本を読むなど)のどれかを好みにより選択することが推奨されています。薬物療法では、抗うつ薬「SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)」のパロキセチン塩酸塩水和物とセルトラリン塩酸塩は保険適用されており、第一選択薬として推奨されます。

 この病気を放置すると「うつ病」を合併するケースが多いことが報告されています。また、パニック症は循環器領域や呼吸器領域の病気(狭心症、不整脈、気管支ぜんそくなど)の症状と類似しており、内科や救急科においても鑑別診断の念頭に置くべき疾患の一つです。パニック症はとても辛いものですが、この病気で命を落とすことはありません。必要以上に恐れず、思い当たる症状があれば精神科・心療内科を受診してください。

2021/02/20

うつ病の行動活性化療法

 

岡本病院 鈴木 志麻子 医師




医療法人社団正心会

岡本病院

鈴木 志麻子 医師
●精神保健指定医・日本精神神経学会精神科専門医・医学博士
●医療法人社団正心会 岡本病院 札幌市中央区北7条西26丁目3番1号

http://www.okamoto-hp.com/





[うつ病の行動活性化療法]どのような治療法ですか

 うつ病に効果がある心理療法の一つです。うつ病では、悲観的な気分と「きっとうまくいかない」「やる気が起きないからできない」等の囚(とら)われ(認知のゆがみ)から行動を起こせず、その結果「今日も何もできなかった」「自分はダメだ」と更に気分が落ち込む悪循環に陥りがちです。 

 そこから抜け出すために、この治療法では「気分」や「認知」に働きかけるのではなく、 「行動パターン」を変えることで気分を改善することに取り組みます。日本では、カウンセリングやデイケアなどで実施されている場合が多いようです。

 

治療の流れを教えてください

 

 「活動(行動)記録表」を用いて、一時間区切りで「やったこと」と「その時の気分(点数化)」を毎晩記入していきます。一週間分を振り返り、気分の良くなる行動と悪くなる行動を洗い出します。自分の行動パターンを眺めると、活動と気分の色々な関係に気づくでしょう。意外なことが気分転換になる、やってみたら案外楽しかった、○時までに寝た方が調子がいい・・・等。その上で、気分が良くなる行動が多くなるように翌週のスケジュールを組み立て、それにチャレンジするサイクルを繰り返していきます。

 さらに「どんな行動が気分を良くするか」を試してみて(行動実験)、行動のレパートリーを増やしていきます。以前やれていた活動をリストアップし、簡単なことから再び取り組んでみるのも良いでしょう。難易度が高い活動の場合は、小さなステップに分割するのがコツです。例えば「服を買いに出かける」という活動は〈外出に必要な持ち物をそろえる〉〈バスの時刻を調べておく〉〈外出着に着替える〉〈玄関から出る〉…など、出来るだけ細かく分けることで、取り組みやすくなります。こうして「意外と悪くなかった、出来た」という実感を重ねることで、気分を改善していきます。

 

気をつける点はありますか

 

 「調子の良い時は行動する、悪い時は行動しない」というパターンには要注意です。そうした「症状中心」の生活を続けていると、症状に振り回される感覚が強まり、自信もなくなっていきます。気分が悪い時は悪いなりに、まずは小さなことからやってみることが大切です。

 また、この治療の肝心なところは、単に活動量を増やすことではありません。自分の本来の目的や人生で大切にしたい事(例:復職する、家族が仲良く過ごす、趣味に打ち込める等)に近づく行動を増やすことにあります。ですがそれに伴う苦痛のために、やるべきことを避けたり別の無駄な活動に没頭したりといった、「回避パターン」に陥ることがあります。その問題の克服には、「自分が大切にしている価値は何か」を改めて見つめ直し、行動の軸にすえる作業が必要となります。

 

誰でも取り組めますか

 

 急性期で病状が重い時は避けるべきです。また、周囲の人がやみくもに楽しいことをやらせて効果があるものでもありません。しかし、回復期に入った方や軽度の抑うつ状態が長引いている方、鬱々(うつうつ)とした毎日を変えたいと思う方では、取り組んでみても良いかもしれません。

 この治療の情報はインターネット上にもいくつかありますし、自分で取り組むための本も出版されています。治療中の方、あるいは自分ではうまく出来ない場合には、主治医や専門家に相談することをお勧めします。

 

参考文献:「うつ病の行動活性化療法」岡本泰昌、医学のあゆみ、242巻7号 p505-509 ’2012年、「行動活性化療法」鈴木伸一、臨床精神医学41巻8号、p1001-1005 ’2012年

2020/09/17

精神科における「病識のない」患者さん

岡本病院 瀬川 隆之 医師



医療法人社団 正心会
岡本病院
瀬川 隆之 医師
●精神保健指定医。日本精神神経学会認定精神科専門医
●岡本病院 札幌市中央区北7条西26丁目3-1
http://www.okamoto-hp.com/




精神科における「病識のない」患者さん

 病識とは簡単にいえば「病気にかかっている自覚」のことです。精神疾患では、自分が病気であることが分からなくなることがあります。これを「病識がない状態」と呼びます。これは、単に「病気についての知識が足りない」ということではなく、「自分の病状、状態を客観的にみることができない」という症状なのです。

 病識がない状態は、統合失調症、うつ病、躁うつ病、認知症など、さまざまな精神疾患でみられます。周囲からみると病的であるのは明らかなのに、本人はそのように考えていませんから、妄想などの病的な体験に支配されていろいろな問題行動を起こしてしまいます。病識がないことは、特に幻聴、妄想が活発な統合失調症の患者さんで問題になることが多く、今回はそのような患者さんを念頭に置いてお話しします。

 
病識のない患者さんを受診につなげるには


 病識のない患者さんを受診につなげるには工夫が必要です。真正面から「あなたの言っていることはおかしい、医者に診てもらおう」と説得したのでは、おそらくトラブルになってしまうでしょう。患者さん本人は幻聴、妄想などの病的な体験を真実だと思っていますので、ご家族などの周囲の方はその体験が本当かどうかについては争わず、不眠や不安、恐怖や緊張といった患者さん本人が苦しんでいる他の症状を聞き出し、それらの症状が治療で楽になる可能性を伝え、受診を促してください。

 しかし医療の必要性をまったく感じていない患者さんの場合、どんなに工夫を凝らしても受診につなげられないケースがあります。そういう時は、何か問題行動を起こしたタイミングで、救急や警察が介入し、法律に基づいた強制的な入院という形での受診になることが多いです。


受診後、どのように患者さんにかかわっていくのか


 どうにかして受診につなげることができても、そこから適切な治療を進めていくのにもまた工夫が必要です。医療者側が病気やその治療について「正しい知識を教えてあげるのだ」という押し付けのような態度を取ってしまうと、患者さんは反発し、心を閉ざしてしまいます。

 患者さんと良い関係を築くためには、まずは患者さんの話をよく聞いた上で、「私たちはあなたの味方」であり、「あなたの困り事を解決する手助けをしたい」という思いを伝える必要があります。

 病識がなく、治療を望んでいない患者さんとかかわる方法にLEAP(リープ)というコミュニケーション技法があります。簡単にいうと、傾聴し(Listen)、共感し(Empathize)、同意できる(Agree)共通の目標を見つけ、協力関係(Partner)となる方法です。同意できる共通の目標は、「退院する」「家族と仲直りする」「仕事に復帰する」など、ひとまず何でもいいと思います。LEAPの詳しい内容については「病気じゃないからほっといて(ザビア・アマダー著/星和書店)」という一般の方にも比較的分かりやすく書かれている書籍が出ていますので、興味のある方は読んでみてはいかがでしょうか。

 

 治療を望まない患者さんを治療しなければならない場面が多いのが精神科の特徴です。病識のない患者さんには、こちらの善意はストレートには伝わりません。それぞれの疾患や、患者さん一人ひとりの病状、性格や生活背景などを考慮した接し方、治療法などの工夫が必要です。

2020/07/13

幻覚や妄想の症状が生じる精神疾患

福住メンタルクリニック 宇佐見 誠 院長


医療法人 五風会 
福住メンタルクリニック
宇佐見 誠 院長
●1994年旭川医科大学医学部卒業。日本精神神経学会認定精神科専門医。精神保健指定医
●福住メンタルクリニック 札幌市豊平区月寒東1条15丁目1-20メープル福住ビル3階
http://www.fukuzumimc.jp/




「幻覚」や「妄想」が生じる精神疾患

 幻覚や妄想を引き起こす原因として、いくつかの精神科の病気が考えられます。今回は、①年代 ②幻覚や妄想以外の症状 ③幻覚や妄想の内容から代表的な精神疾患を4つ紹介します。

 10代後半から30代といった若い世代に発症しやすいのが「統合失調症」です。思考や感情などをうまく制御できなくなり、幻覚や妄想、認知機能低下などが表れる病気です。30代から50代までに多くみられるのが「うつ病(などの感情障害)」、60代以降の高齢者がかかりやすいのが「認知症」と「せん妄」です。せん妄とは、病気などで体調が悪化したり、手術後の薬が体調に合わなかったりした際に発症しやすくなる軽度のパニック状態(意識の混濁)のことです。


幻覚・妄想以外の症状と幻覚・妄想の内容

 
 統合失調症の場合、会話や行動に統一性がないように見えたり、感情が乏しく、無気力になったりという症状もみられます。周りに誰もいないのに命令する声や悪口が聞こえたりする幻聴、「ずっと監視されている」「命を狙われている」などの妄想が特徴です。

 うつ病は、気持ちがふさぎ込む、何にも興味や関心を持てない、身体的な不調(食欲がない、眠れない、疲れやすい)などの症状もあります。幻覚よりは妄想が多く、自分が行ったことを罪だと考えたり、重い病気にかかったと思い込んだり、お金に関して必要以上に心配事を抱いたりするのが特徴です。

 認知症の場合、記憶障害やここがどこか、今いつなのか分からない見当識障害、人格・性格の変化も代表的な症状です。認知症の妄想として頻繁に表れるのが、物盗られ妄想で、自分の持ち物を失くし、見つけられず、誰かが盗んだのではと疑ったり騒いだりするものです。

 せん妄は、もうろうとして話のつじつまが合わなかったり、意識がくもってぼんやりしたり、一瞬「寝ぼけているの?」と思えるような症状が表れます。幻覚・妄想は実際にはいない虫などの小動物や人が見える幻視が特徴ですが、症状は一時的なものであることが多く、身体の回復に伴って改善し、大半は症状があった時のことを覚えていません。

 

幻覚・妄想が起こった時に心掛けたい対応

 
 幻覚や妄想の症状がある本人に対して、ご家族はどう対応すればいいのでしょうか。幻覚・妄想があるようだと周囲が認識した時、「何も見えない」「そんなことはありえない」などと頭ごなしに否定すると、本人が混乱して状態を悪化させる可能性があります。まずは否定も肯定もせず、本人に起きていることを正確に把握するためにも、本人の訴えを中立的に聞くという姿勢が大事です。そして、すみやかに精神科医に相談して、適切な治療につなげることです。

 治療はそれぞれの病気によって異なりますが、基本的には薬物療法を柱に、周囲の環境調整など心理社会的な治療を組み合わせて行なっていきます。幻覚・妄想の症状には主に「抗精神病薬」と呼ばれる薬剤が用いられます。

 幻覚・妄想は適切な治療を受ければ、回復に向かう可能性が高い症状です。良好な予後を迎えるためには、発症からなるべく早い段階で病気の診断・治療に結び付けることが何よりも大切です。

2020/02/20

認知症の早期診断・治療

さっぽろ香雪病院 本谷 方克 医師



医療法人 五風会
さっぽろ香雪病院
本谷 方克 医師
●平成17年旭川医科大学卒。KKR札幌医療センター、北海道大学病院、札幌田中病院、中江病院を経て平成28年より現職。
●さっぽろ香雪病院 札幌市清田区真栄319番地
http://www.sapporo-kohsetsu.or.jp/




認知症の多様な症状

 高齢者人口の伸びに従い、増え続ける認知症。厚生労働省によると、患者数は2025年には約700万人に達する見込みで、そうなると65歳以上の高齢者のおよそ5人に1人が認知症という状況になります。

 認知症とは、簡潔に言えば「いったん正常に発達した知的機能が後天的に低下した状態」です。それによって社会生活に支障を来すようになると臨床的な問題になってくるわけです。認知症の症状は大きく2つに分けられます。

 1つはまさに認知機能の障害であり「中核症状」と呼ばれるも

のです。直前の出来事を忘れてしまうなどの「近時記憶障害」、日時や場所などが分からなくなる「見当識障害」、料理を作る・買い物をするなど、順を追って物事を実行することができなくなる「遂行機能障害」などが挙げられます。

 これらの中核症状に加えて生じてくるのが「周辺症状(BPSD)です。うつ病と同様の状態になったり、不安感や焦燥感を生じたり、幻視・幻聴が現れたり、と非常に多彩な症状があります。特に問題になるのは強い被害妄想を生じるケースと、性格変化によって暴言や暴力などが現れるケースです。中核症状よりもむしろこれらの周辺症状が問題となって精神科入院となる例を日常的に経験します。

 

早期診断・治療の重要性


 認知症の分類の中で最も多いのはアルツハイマー型認知症です。次いで血管性認知症、レビー小体型認知症と続きます。それぞれの病型によって治療方法や進行の形式が変わってくることがあり、早期に発見し早期に病型分類を明らかにすることが必要です。

 しかし現在のところ、認知症の根本的な治療法・治療薬は発見されていません。投薬や機能訓練などにより進行を遅らせるのが精一杯というところです。治療の中心は薬物療法です。例えばアルツハイマー型認知症では治療薬によって進行をある程度緩やかにできる可能性があります。このほか抑うつや興奮など、周辺症状に応じた適切な治療薬を選択します。病状の進行に伴い周辺症状が変化するケースも多く、それに応じて薬の使い方も変わってきます。絶対的な正解は無いため、ほかの精神疾患の治療薬を用いるなど薬物療法は個別的で多様です。

 デイケア、デイサービスなどを上手に利用し、残された元気な機能をなるべく維持することも薬物療法とともに必要です。家族や介護者がどのように患者さんと接するか、また、生活環境を整えるかがとても大切です。

 

認知症になる前に「備え」を


 金融機関が「この人は認知症ではないか」と疑った場合、口座が凍結されることがあるのを知っていますか?これによって認知症患者さん本人が銀行にお金を持っていても、患者さんの入院費はそこから支払えない、といった事態が起こります。

 こうした困りごとを避けるために、元気なうちに老後の財産管理や継承方法などを考えておくことも認知症対策の一つと言えるでしょう。いざ認知症と診断されてから慌てて成年後見制度を利用する方が多いのですが後見人の設定には手間と時間がかかりますし、また家族と成年後見人の間でトラブルを生じるケースもあります。遺言書作成や家族信託の活用なども検討し、早めに十分な備えをしておくのが良さそうです。

2020/01/14

うつ病の原因と治療

岡本病院 山中 啓義 副院長



医療法人社団 正心会 岡本病院
山中 啓義 副院長
●日本医師会認定産業医、日本精神神経学会認定、精神科専門医
●岡本病院 札幌市中央区北7条西26丁目3-1
https://www.ohashi-eye.jp/





近年[現代型うつ病][新型うつ病][軽症うつ病][児童・思春期うつ病]といったさまざまなタイプの[うつ病]が注目されています。
ここではうつ病の基本的な特徴を紹介します。


うつ病の患者数

 日本における最近の疫学調査では、うつ病を含む気分障害患者は約112万人とされます。日本では有病者受診率が低く、実際はもっと多いとの報告もあります。12カ月有病率(過去12カ月にうつ病を経験した人の割合)は2.7%で、生涯有病率(生涯の中でうつ病を経験した人の割合)は5.7%と推定されています。これは、生涯にうつ病を経験する日本人は17人に1人いることを意味し、うつ病が決してまれな病気ではなく、誰でもかかる可能性があることを示しています。わが国のうつ病患者は女性にやや多く、中高年に多いことが特徴です。

 

「憂うつ」と「うつ病」の違い


 人はだれでも不幸なことがあったり、失敗したり、嫌なことがあったりすると悲しみ、ふさぎ込むようになります。その時の気分はきっと「憂うつ」に違いないでしょう。大抵の「憂うつ」は、時間が経つと気にならなくなり、別の良いことがあると気持ちが晴れ、気分転換に好きなこともある程度は楽しめるようになります。これらの範疇であれば「憂うつ」も自然な感情の動きととらえられます。

 しかし、うつ病になると、環境が好転したり、周囲の援助があったりしても、気分の晴れない状態などが2週間以上にわたって続きます。よく見られる心の症状としては、「気力が出ず、何事も億劫に感じる」「午前中の調子が悪く午後から少し楽に感じる」「ぐっすり眠れない」などが挙げられます。

 

うつ病の原因


 うつ病に対して「心の弱い人がかかる病気」「心の持ちようで克服できる病気」と誤解している人は少なくありません。しかし、決してそうではなく、うつ病は「脳の病気」であり、「脳内の化学伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのアンバランスが原因」であることが判明しています。

 また、うつ病の発症にはストレスが関わっていることが多いですが、「どのようなこと」を「どの程度」にストレスとして感じているかは、非常に個人差が大きいことを留意する必要があります。

 

うつ病の治療


 適切な治療を継続すれば、うつ病は改善するケースが多いです。治療として第一は十分な精神的休息を取ること。第二に、ストレスと感じている事柄から遠ざかるなど環境調整を行うこと。第三に、専門医による薬物治療を開始することです。現在、薬物治療はSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)が第一選択薬となっています。また、非薬物療法として支持的精神療法、認知行動療法、作業療法などの有効性も確立されています。

 これらの治療により、次第に精神的苦痛は軽減されますが、症状は一進一退することもあります。一時的に悪化することがあっても悲観せず、治療を継続することが大切です。

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