<老化現象による皮膚の良性腫瘍>
脂漏性角化症は、別名「老人性イボ」と呼ばれ、皮膚の老化現象によってできる良性腫瘍です。主に40代以降に発症し、70代になるとほとんどの方に現れます。はじめは頬やこめかみに数ミリ程度のシミとして出現し、徐々に黒く盛り上がっていきます。
多くは、無症状で経過しますが、できものの周りにかゆみを訴える方もいます。通常のシミ取りレーザーに反応せず、繰り返し出現する場合は、脂漏性角化症である可能性が高いです。脂漏性角化症は、一般的なウイルス性のイボではないため市販薬では治りません。首のまわりに多発するイボは「アクロコルドン」と呼ばれます。放っておいても健康上問題になることはあまりないのですが、整容的な問題になるケースが多々あります。例えば、首元が広く開いたシャツを着るのを避けるようになったり、首まわりを隠すのにスカーフが手放せなくなったり、ネックレスなどのアクセサリーがイボに引っかかるので使えなくなったりする方がいます。顔や首のイボが大きく盛り上がり、数が増えると、実年齢よりも老けた印象を与えると悩まれて来院される方が多いです。
<脂漏性角化症の予防と治療>
皮膚を老化させる主な原因としては、紫外線と乾燥が挙げられます。野外で仕事やスポーツをされる方や、日焼けサロンを利用している方などは特に注意が必要です。脂漏性角化症を防ぐためには、日頃から紫外線対策を心がけ、サングラス、帽子、日焼け止めを積極的に使用することが重要です。また、アトピー性皮膚炎や花粉症などの持病があり、顔面を頻繁に掻く習慣がある方は、皮膚の保湿力が低下し、皮膚の乾燥を生じやすいです。適切な保湿クリームを用いるなどして皮膚への過剰な刺激を避けることが、皮膚の老化防止に効果的です。
脂漏性角化症の治療法は、その大きさや発症部位によって異なりますが、炭酸ガスレーザー照射や外科的切除、電気メスを使って焼灼する「電気凝固療法」などにより、患部のイボを削り取る場合がほとんどです。いずれも日帰り治療が可能で、数分から10分程度の処置で済みます。
脂漏性角化症の症状は、皮膚がんなど深刻な病気との鑑別が困難な場合があります。また、脂漏性角化症の症状が短期間のうちに全身に多発するケースがあり、これはレーザー・トレラ徴候と呼ばれるもので、胃がんやリンパ腫などを合併している可能性が考えられるので、特に注意が必要です。脂漏性角化症をはじめとする、整容的な問題にもつながりがちな顔や首のできものは、まず一度形成外科で診察を受けることをお勧めします。
石山 誠一郎 院長
●日本形成外科学会認定形成外科専門医。
北海道大学形成外科客員臨床講師。
●医療法人 藻友会 いしやま形成外科クリニック
http://www.ishiyama-keisei.com/