2025/08/17

長引く胃やみぞおちの不快感 [機能性ディスペプシア]

<新たな国民病になり得る病気>


 機能性ディスペプシア(FD)とは、内視鏡検査などで特別な所見(潰瘍やがんなど形で分かる異常=器質的疾患)が認められないのに、胃やみぞおちなど上腹部の不快な症状が持続して、または繰り返し出現する消化管機能障害のことです。健康診断受診者の分析では、日本人の11~17%がかかっているとのデータもあり、新たな国民病になり得る病気として近年注目を集めています。

 少量の食事でおなかがいっぱいになる、胃もたれ、みぞおちの痛みや焼ける感じなどが主な症状です。命にかかわる病気ではありませんが、つらい症状が慢性的に続き、食事が楽しめなくなるなど、患者さんの生活の質を大きく低下させます。病気の原因はさまざまですが、胃酸過多、胃の膨らみにくさ、胃の食べ物を送り出す機能の低下、胃の知覚過敏、ピロリ菌の感染などがあります。また、ストレスや不安、うつなど精神心理的要因も大きく関与していると考えられています。食道に炎症を起こしていないのに逆流症状を来す  「非びらん性胃食道逆流症 (NERD)」や腸自体に病気がないのに腹痛や便秘、下痢が続く 「過敏性腸症候群(IBS)」 との合併が多いことも特徴の一つです。


<効果みながら様々な薬で治療>


 原因が多様で背景も複雑な病気であるため、治療には多くの種類の薬が用いられます。胃酸が出るのを抑える薬や胃の動きを良くする薬、漢方薬、抗不安薬などです。症状の表れ方は一人一人違うので、患者さんの状態に応じてこれらを使い分け、効果を確認しながら“合う薬”を見つけていきます。多くの場合、複数の薬を併用します。ピロリ菌陽性例では除菌治療が有効な場合もあります。また、不規則な食事時間やかたよった食事内容、睡眠不足や運動不足など、食習慣・生活習慣の乱れを改善したりストレスを発散したりすることで、症状が良くなるケースも多いです。

 症状改善に不可欠なのは、医師と患者さんの根気強いコミュニケーション、信頼関係の構築です。どんな治療でもすぐに完全に良くなるとは限らないため、最初は症状が今より軽くなることを目指しながら、あせらず、患者さん一人一人に最適な薬や生活スタイル、ストレスの軽減法などを二人三脚で探し出していく必要があります。

 適切な治療によって症状が良くなれば、生活の質は回復します。詳しい原因が不明という厄介な病気ですが、決してあきらめず、機能性ディスペプシアに詳しい病院、医師のサポートを受けることが重要です。





社会医療法人 交雄会メディカル
交雄会新さっぽろ病院
渡   二 郎  院長
1986年旭川医科大学医学部卒業。旭川厚生病院消化器科、旭川医科大学第3内科、米ニュージャージー医科歯科大学消化器内科、兵庫医科大学消化管科教授、2019年4月より現職。日本消化器病学会認定消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医

社会医療法人 交雄会メディカル  交雄会新さっぽろ病院
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