<加齢で発症、手術治療が中心>
白内障は、眼の機能の中でカメラのレンズのような役割をしている「水晶体」が濁ってしまい、見えにくくなる病気です。かすむ、まぶしい、光に輪がかかったりにじんだりする、ものが二重や三重に見えるなどの症状が表れます。白内障の原因の多くは加齢です。
早い人では40歳代から始まり、年代が上がるにつれて増加し、80歳以上ではほぼ100%が発症するとされます。治療には進行抑制のため点眼薬が処方されることもありますが、効果は不十分で最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細くして取り除き、代わりに人工の「眼内レンズ」を挿入するものです。白内障手術は全国で年間170万件以上行われており、最も実施件数の多い外科手術です。手術の技術向上や医療機器の進歩によって、短時間で正確にできるようになり、患者さんの体への負担は少なくなっています。
<生活に合わせた眼内レンズを>
眼内レンズは、大きく分けて「単焦点」と「多焦点」があり、それぞれ長所と短所があります。
単焦点レンズは、〈遠く〉〈中間〉〈近く〉のいずれか一つの距離にピント(焦点)を合わせます。焦点を合わせたい距離をあらかじめ決めて手術を行い、それ以外の距離ではメガネを使って焦点を調節します。一方、多焦点レンズは、一枚のレンズで複数の距離に焦点が合います。近年は遠く、中間、近くの3カ所に焦点が合うレンズも登場しています。自由に焦点を変えられるような見え方とは異なりますが、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。手元を見るときは老眼鏡が必要な場合もありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。ただし、多焦点レンズに共通することですが、構造上、レンズに入ってくる光を複数の焦点に振り分けるため、色の鮮やかさやくっきり感などの解像度は落ちます。また、夜間に街灯や車のライトがにじんだり、輪がかかって見えるハローや、まぶしく感じるグレアと呼ばれる現象が起こりやすいです。
眼内レンズの選択は、いかに皆さん一人ひとりの生活に合った「レンズ=見え方」を選ぶかということが重要です。例えば、長時間細かい作業や夜間に車の運転をする方などは単焦点レンズの方が向いていますし、メガネをなるべく掛けたくない方やスポーツなどアウトドアでの活動を好む方は多焦点レンズの方が向いているかもしれません。
また、眼の状態によっては多焦点レンズを使用できない場合もあります。そのため、適切な眼内レンズの選択のためには、通常の白内障手術以上に精密な検査が必要です。患者さんは、検査機器が整った病院でよく医師と相談し、それぞれのレンズの特徴をよく理解した上で比較、検討し、自身のライフスタイルに最も合うレンズを選んでください。
大橋眼科
藤谷 顕雄 副院長
2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医
●大橋眼科 北海道札幌市白石区本通6丁目北1-1
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