2020/01/14

うつ病の原因と治療

岡本病院 山中 啓義 副院長



医療法人社団 正心会 岡本病院
山中 啓義 副院長
●日本医師会認定産業医、日本精神神経学会認定、精神科専門医
●岡本病院 札幌市中央区北7条西26丁目3-1
https://www.ohashi-eye.jp/





近年[現代型うつ病][新型うつ病][軽症うつ病][児童・思春期うつ病]といったさまざまなタイプの[うつ病]が注目されています。
ここではうつ病の基本的な特徴を紹介します。


うつ病の患者数

 日本における最近の疫学調査では、うつ病を含む気分障害患者は約112万人とされます。日本では有病者受診率が低く、実際はもっと多いとの報告もあります。12カ月有病率(過去12カ月にうつ病を経験した人の割合)は2.7%で、生涯有病率(生涯の中でうつ病を経験した人の割合)は5.7%と推定されています。これは、生涯にうつ病を経験する日本人は17人に1人いることを意味し、うつ病が決してまれな病気ではなく、誰でもかかる可能性があることを示しています。わが国のうつ病患者は女性にやや多く、中高年に多いことが特徴です。

 

「憂うつ」と「うつ病」の違い


 人はだれでも不幸なことがあったり、失敗したり、嫌なことがあったりすると悲しみ、ふさぎ込むようになります。その時の気分はきっと「憂うつ」に違いないでしょう。大抵の「憂うつ」は、時間が経つと気にならなくなり、別の良いことがあると気持ちが晴れ、気分転換に好きなこともある程度は楽しめるようになります。これらの範疇であれば「憂うつ」も自然な感情の動きととらえられます。

 しかし、うつ病になると、環境が好転したり、周囲の援助があったりしても、気分の晴れない状態などが2週間以上にわたって続きます。よく見られる心の症状としては、「気力が出ず、何事も億劫に感じる」「午前中の調子が悪く午後から少し楽に感じる」「ぐっすり眠れない」などが挙げられます。

 

うつ病の原因


 うつ病に対して「心の弱い人がかかる病気」「心の持ちようで克服できる病気」と誤解している人は少なくありません。しかし、決してそうではなく、うつ病は「脳の病気」であり、「脳内の化学伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのアンバランスが原因」であることが判明しています。

 また、うつ病の発症にはストレスが関わっていることが多いですが、「どのようなこと」を「どの程度」にストレスとして感じているかは、非常に個人差が大きいことを留意する必要があります。

 

うつ病の治療


 適切な治療を継続すれば、うつ病は改善するケースが多いです。治療として第一は十分な精神的休息を取ること。第二に、ストレスと感じている事柄から遠ざかるなど環境調整を行うこと。第三に、専門医による薬物治療を開始することです。現在、薬物治療はSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)が第一選択薬となっています。また、非薬物療法として支持的精神療法、認知行動療法、作業療法などの有効性も確立されています。

 これらの治療により、次第に精神的苦痛は軽減されますが、症状は一進一退することもあります。一時的に悪化することがあっても悲観せず、治療を継続することが大切です。

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