2024/03/15

慢性便秘症──診療ガイドライン改定

<重症化で心血管疾患リスクも>


 昨年「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が、日本消化管学会により約6年ぶりに「便通異常症診療ガイドライン2023 ―慢性便秘症」として改訂されました。便秘症の定義・分類・診断基準から病態生理、診断検査、内科的治療まで、前版以降の進歩や最新知見が盛り込まれ、便秘症の日常診療には欠かせない資料となっています。

 慢性便秘症とは、慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも様々な支障をきたしうる病態と定義されます。

 便秘の症状で外来を受診される方は多く、慢性便秘症の有病率は国や地域によって違いがあるものの、おおよそ10〜15%といわれています。発症リスクとして、性別では女性、身体活動性の低下、腹部の手術歴がある、加齢、一部の薬剤などが挙げられます。また、慢性便秘症は心血管疾患の発症・死亡リスクの上昇、パーキンソン病や腎疾患の発症リスクの上昇に関与することが分かっています。

 便秘の原因には、大腸がんなど重篤な病気が隠れていることがあります。特に排便習慣の急激な変化、血便や6ヶ月以内の予期せぬ3kg以上の体重減少といった症状を伴う場合などは注意が必要で、すぐに医療機関を受診してください。


<生活習慣の見直しが第一歩>


 便秘の予防や改善のためには、食生活や運動など基本的な生活習慣の見直しが第一歩です。朝起きて、朝食をとり、トイレに行くという生活リズムを習慣付けましょう。食品ではキウイフルーツやプルーンが便秘の解消に効果があることが分かっています。米や豆類由来の食物線維が多く含まれる食事やヨーグルトなどの乳酸菌食品も有効との報告があります。身体活動性の高い人は食物線維と便の硬さに相関を認めます。活動性の低い人では関連性はないようですので食物繊維をとるだけではなく体を動かすようにした方がよいでしょう。また1日15分、週5回の腹壁マッサージが症状改善に有効だとの報告もあります。

 便秘にはさまざまな種類があり、治療は一律ではありませんが、内科的な治療としては下剤などの内服薬が主体となります。いろいろな種類があり、便秘の原因やタイプを正確に見極めた上で使わないと、効果がないばかりか症状を悪化させることもあるので注意が必要です。他に服用している薬との関係で使用しない方がよい薬もあります。ご自分に合った薬を根気よく見つけるのがよいでしょう。気をつけたいのは「刺激性下剤」と呼ばれるものです。市販薬も多く販売されていますが、長く使っていると効き目が低下したり習慣性があるなどの問題があるので、頓用や短期間の使用にとどめた方がよいでしょう。


佐野内科医院
佐野 公昭 院長
1984年岩手医科大学卒業。89年北海道大学大学院修了。北海道大学病院、愛育病院、市立札幌病院などを経て、2008年より現職。日本内科学会認定総合内科専門医。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士

佐野内科医院
札幌市中央区南5条西15丁目1-6
http://www.sano-naika-clinic.com/


人気の投稿

このブログを検索