<放置していると失明のリスクも>
目をカメラに例えるとフィルムに当たるのが網膜で、その中心部を「黄斑」と呼びます。この黄斑が加齢とともに病的な状態になり、ものがゆがんで見える、ぼやける、見たいところが暗くなるといった症状とともに、視力低下をきたすのが加齢黄斑変性という病気です。
老化が主因ですが、紫外線や喫煙、遺伝要因なども病気に関与することが分かっています。日本では成人の中途失明原因の第4位になっています。近年増加傾向にあり、患者数は70万人超にのぼり、50歳以上の人では約60~100人に1人にみられると推定されています。
加齢黄斑変性には「滲出型」と「萎縮型」の2つのタイプがあります。滲出型は、網膜の外側にある「脈絡膜」から異常な血管(新生血管)が発生して網膜側に伸びてくるタイプです。新生血管は構造が弱く、血液や水分が漏れ出て黄斑が機能障害を起こし視力が低下します。日本人の加齢黄斑変性は、多くがこのタイプです。一方、萎縮型は加齢とともに黄斑の組織が徐々に萎縮していくタイプで、欧米人に多いです。進行は緩やかですが、有効な治療法はありません。最近海外では萎縮の進行を遅らせる薬剤が承認されましたが、日本ではまだ未承認です。
<治療の柱となる抗VEGF療法>
滲出型の治療は、新生血管の活動性を抑える薬(VEGF阻害剤)を目の中に注射する「抗VEGF療法」が第一選択となります。導入期では、月1回の注射を3カ月間繰り返します。その後の維持期は、定期的に検査を行い必要に応じて注射をします。他にも様々な治療スケジュールがあり、病態に合わせて相談していくことになります。病期によっては視力維持のみならず視力改善の効果も期待できますが、完治はしないので定期的に受診し、追加治療が必要になることが多いです。
近年は新しいVEGF阻害剤が登場し、従来薬に比べて治療効果が強い、あるいは投与間隔を延長できる可能性がでてきました。患者さんにとって通院や治療、経済的な負担の軽減につながることが期待されています。病状や体質などにより切り替えられない場合もあるので、まずは主治医に相談してください。
新生血管に集まる特殊な薬剤を注射し、そこに専用のレーザー光線を当てることにより、新生血管を閉塞させる「光線力学療法(PDT)」という治療法もあります。治療できる施設は限られるものの、注射でのコントロールが難しい場合には検討されることがあります。
加齢黄斑変性は早期発見・治療が何より大事です。早期に発見し適切な時期に治療を受けないと、進行してからでは視機能の改善が難しくなります。症状が出たらすぐに眼科を受診するのはもちろんですが、視覚障害の有病率が50歳代で増加することを考えれば、40歳を過ぎたら自覚症状がなくても定期的に眼科で検診を受けることをお勧めします。
藤谷 顕雄 副院長
2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医
●大橋眼科 北海道札幌市白石区本通6丁目北1-1
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