<21年に診療ガイドラインが改訂>
機能性ディスペプシア(FD)は、症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないにもかかわらず、慢性的なみぞおちの痛みや胃もたれなどの不快感・不調が続く病気です。命にかかわる病気ではないですが、罹患すると患者さんの生活の質を大きく低下させます。
かつては、慢性胃炎や神経性胃炎と診断・治療されていました。ただ、胃の炎症が症状の原因ではないことから、近年はFDという診断名が使われるようになりました。日本人の有病率は、検診受診者の11〜17%、上腹部症状を訴え病院を受診した患者さんの45〜53%と推定され、新たな国民病といわれるほど注目されています。
原因として、胃の働きが悪くなっていることや、胃の知覚過敏などが考えられます。これらは自律神経の働きと密接に関係しており、身体的、精神的ストレスの影響を強く受けることが知られています。
2021年4月に、日本消化器病学会がまとめるFDの診療ガイドラインが7年ぶりに改訂されました。改訂により、上部消化管内視鏡検査は必須ではなく「症状、年齢、病歴、ピロリ菌感染の有無、検査歴などの総合的な判断」により、FDと診断できるとしました。診断のハードルが下がったことで、より早期に治療を開始できるようになりました。
<FDの診断、治療の流れ>
診断は、十分な問診で症状を詳しく聞くことから始めます。症状が多様で日によって、あるいは時間によって変わったり、患者さんによって表現が異なることもあります。自己記入式質問票というものがあり、診断に有用で用いることもあります。次いで血液検査や便検査、超音波検査、内視鏡検査などを行い、潰瘍などの器質的疾患がないことを確かめて診断します。
治療の目標は満足しうる症状の改善です。まず、食事と生活習慣を改善することは基本になります。就寝前に食事をしない、暴飲暴食、早食い、喫煙、過度の飲酒など、胃に負担を掛ける生活習慣を改めます。また、ストレスを取り除き、散歩など適度な運動を心がけることも大切です。
薬物療法としては、胃の動きをよくする消化管運動機能改善薬や、胃酸の分泌を抑える酸分泌抑制薬、漢方薬、抗不安薬など多くの種類の薬が用いられます。患者さんの状態に応じてこれらを使い分け、多くの場合、複数の薬を併用します。すぐに効果が出ず時間がかかることもあります。
医師は生活習慣や職場環境など患者の情報から、最適な治療法を見つけ出します。症状の現われ方が一人一人違うFDの治療においては特に、患者さんと医師のコミュニケーションが大切です。治療は根気よく続けてください。