<感染気付かず病気進行も>
性感染症の一つ、梅毒の患者さんが近年急増しています。症状として肛門や性器にしこりができることがあるので、肛門科・外科である当院の検査・診察で梅毒が見つかるケースも珍しくないです。また、症状がなくても、別のおしりの病気で検査をしたところ思いがけず梅毒が見つかるケースもあります。特に若い世代の感染の増加が目立ちます。
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされます。性交のほか、口や性器などの粘膜や皮膚から感染します。感染から3週間程度の潜伏期間を経て発症する第1期には、肛門や性器、口に硬いしこりができたり、股の付け根が腫れたりしますが、自然に消えます。3カ月を過ぎる第2期には、手のひらや足の裏、体に発疹が広がりますが、これも治療をしなくても自然に消えます。3年を超える第3期になると、皮膚や筋肉などに腫瘍ができ、鼻が欠けることもあります。さらに放置していると、脳や心臓に合併症が出て死に至る場合もあります。 また、妊婦が感染すると、死産の原因となるだけでなく、胎盤を通じて胎児が「先天性梅毒」となり、障害を引き起こす恐れもあります。
しこりや発疹には痛みやかゆみがなく、また症状が消えたり現れたり、出なかったりすることもあるため、なかなか気付きにくく、放置されることが多いのがこの病気の厄介な点です。梅毒が、何年もかけて進行していく恐ろしい病気で、気付かずにいると命にもかかわる病気であることを、まず広く知ってほしいです。
<ためらわずに早期受診を>
感染しているかどうかは肛門などの状態や問診、採血で分かります。肛門科や泌尿器科、皮膚科、婦人科などで検査できます。
梅毒は、現在では発見が遅れなければ、比較的簡単に治療ができる病気です。ペニシリンの注射か錠剤の4週間服用によって完治が見込めるだけに、早期発見・診断の効果は大きいです。受診が遅れると、知らないうちに感染を広げてしまうリスクがあるだけでなく、重症化して治療を受けても後遺症が残ることもあります。症状が出て自覚がある人はもちろん、症状がなくても思い当たる節が少しでもあれば、梅毒の検査を受け、早期治療につなげてください。
肛門部に症状が出やすい性感染症として、梅毒のほかに尖圭コンジローマやヘルペスなどがあります。場所が場所だけに恥ずかしくて誰にも相談できず一人で悩んでいる方も少なくないようです。近年は、女性専用外来や女性医師が在籍している肛門科が増えているので、女性も気軽に安心して受診・相談してもらいたいです。
医療法人 藻友会
札幌いしやま病院
札幌いしやまクリニック
佐 藤 綾 医師
●日本外科学会認定外科専門医。