2023/09/21

沈黙の臓器・肝臓、早めに検査・治療を

<自覚症状なく病状進行>

 肝臓は、成人でおよそ1500gもあるヒトの臓器で最大の器官です。血液によって運ばれてくる栄養分を蓄えたり、それらを体に必要な別の物質につくり変えたり、また、血液中に入り込んだ体に有害な物質を分解し、無毒化する働きなど、重要な役割を担っており、「人体の化学工場」といわれています。

 また肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれます。多少の障害があっても異常を感じることがほとんどなく、病気になっても自覚症状が出にくい臓器だからです。ウイルス性肝炎に感染したり、飲酒によりアルコール性肝炎になったりしても自覚症状が出にくいため、知らない間に病状が進行し、肝硬変や肝臓がんになることもあります。近年はアルコールを飲まない人の脂肪肝(NAFLD)が増えており、そこから脂肪肝炎(NASH)となる方がいて、同じように肝硬変や肝臓がんのリスクになることが分かっています。

 肝臓の病気の早期発見・治療には、特定健診をはじめとする健康診断での血液検査の異常などから、沈黙の臓器の声なき声を聞く姿勢が大切です。


<ALT30超えたら受診を>

 血液検査で肝臓の働きを調べるAST(GOT)、ALT(GPT)という項目があります。これらはともに肝臓などの細胞内に多く含まれ機能している酵素です。障害が起こって細胞が壊れると血液の中へ流れ出るため血液検査で数値が上がり、肝機能障害が起きていることを示します。かつてはどちらも40〜50くらいまでは正常値とされていましたが、現在では30以上は肝臓に障害が起きていることがわかってきました。わずかな異常でも長期にわたると炎症とともに線維化により持続的な肝障害が生じます。慢性肝臓病という状態です。そこで今年6月、日本肝臓学会は肝疾患の早期発見、早期治療につなげるために「ALTが30を超えた場合かかりつけ医へ受診を促す」新たな提言(奈良宣言2023)を発表しました。

 肝障害に要注意と明確に受診を促す指標が示されたのは初めてのことです。まずは、かかりつけ医による採血や腹部超音波などの検査を行い、その結果、必要があれば、さらに消化器内科や肝臓内科による詳しい検査を受けてもらい、肝臓病の早期発見・治療につなげるねらいがあります。軽い障害の場合、日常の生活習慣に気をつけるだけで改善する場合もあります。ALTが30を超えていたら、放置しないでかかりつけ医に相談してみてください。

 肝臓病に限らず、あらゆる病気は早期発見・治療が基本です。健診で異常値が指摘された場合、「特に症状がないし元気だから、放っておいて大丈夫だろう」と安易に考えていると、ご自身の健康を大きく損ねることになります。せっかく受けた検査ですから基準値を少しでも超えているなら、医療機関を受診しましょう。




佐野内科医院
佐野 公昭 院長
1984年岩手医科大学卒業。89年北海道大学大学院修了。北海道大学病院、愛育病院、市立札幌病院などを経て、2008年より現職。日本内科学会認定総合内科専門医。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士

佐野内科医院
札幌市中央区南5条西15丁目1-6
http://www.sano-naika-clinic.com/








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