2021/05/20

コロナ禍でのリハビリ診療(2021.5.20記)

花川病院 菅沼 宏之 院長



医療法人 喬成会

花川病院

菅沼 宏之 院長
●北海道大学卒。日本リハビリテーション医学会指導医、認定臨床医、リハビリテーション科専門医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。
花川病院 石狩市花川南7条5丁目2番地

http://kyouseikai.jp/hanakawahp/





コロナ禍でのリハビリ診療

 新型コロナウイルス感染症が大きな脅威となっていますが、これまでに多くのことも分かってきています。現在では多くの病院で院内感染を防ぐ方法を学習しました。リハビリテーションの現場では患者さんとセラピストの接触が多く、また介助が必要な患者さんではさらに密接に接触する機会が増えます。このため、リハビリにおいては特に感染対策を強化して治療・ケアにあたるケースが多いです。患者さんとリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)相互の体温測定・マスク着用・手指消毒の徹底、近接する場面においてはセラピストのゴーグルやフェイスシールドの使用、リハビリ室の人数制限と換気と共有部分・器具の定期的消毒など、可能な限りの感染防護体制を整え、患者さんたちが安心してリハビリに取り組んでもらえるよう不断の努力を続けています。

 

「回復期」のリハビリ診療

 

 事故に遭ったり病気で倒れたりした直後を「急性期」と呼びます。急性期に手術など必要な処置をし、容体が落ち着いたら、最長6カ月の「回復期」に入ります。ここで治療後に低下した能力を回復するため、さまざまな専門職が共同して集中的なリハビリを実施するのが、回復期リハビリです。以前は「手術後は安静第一」と考えられていましたが、世界的に研究が進む中で「手術直後でも起き上がって動いた方が回復は早い」ということが明らかになっています。在宅復帰に効果を上げるためには、回復期リハビリを少しでも早く集中的に行うことが非常に重要です。

 回復期リハビリの対象となるのは、主に脳卒中や頭部外傷、交通事故による複雑骨折、外科手術などの治療の安静により生じた廃用症候群を有する患者さんなどです。脳卒中は5〜6カ月間、骨折は2〜3カ月間など、疾患に応じて入院できる上限が決まっており、最大1日9単位(1単位20分、最大3時間)まで保険診療が認められています。

 患者さんの病状や要望、生活背景などに応じて個別に目標が設定され、一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立てます。医師を中心に他職種が密接に連携するチームアプローチが不可欠です。医師、看護師、リハビリ専門職、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーらが連携して一つのチームとなり、入院中のリハビリだけでなく、退院した後も快適な暮らしができるようサポートすることが重要です。

 

リハビリ医療の現在と未来

 

 近年、リハビリ分野は飛躍的な進歩を遂げ、新しい多くの治療法が開発されています。以前は「脳卒中などの後遺症は回復しない」という概念が定説化されていた時代もあり、例えば麻痺(まひ)のある手の回復よりも麻痺のない手の訓練を集中的に行うことにより早期に日常生活動作の向上を図ることが主流でした。しかし、現在ではまひのある手を積極的に動かすことが脳を刺激し、後遺症の改善につながることが分かっています。リハビリによりその患者さんに残された機能を強化するだけでなく、障害のある部位・領域にはよりますが失われた機能の回復・改善も期待できるようになってきました。

 支援ロボットを用いるリハビリも新しい治療法の一つです。すべての患者さんに有効というわけではありませんが、従来のリハビリと比べ、より安全性・効率性の高い治療・ケアが可能となり、回復速度の向上や機能改善につながっています。

 医療現場は日進月歩です。今はまだ「不治の後遺症」も近い将来に「治りうる症状」となる日がやってくるはずです。私たちリハビリ医療関係者も日々学び、進化し続けることを望んでいます。

2021/04/20

便秘や快便にまつわる「思い込み」

札幌いしやま病院 河野 由紀子 医局長 




札幌いしやま病院

河野 由紀子 医局長
●2005年札幌医科大学医学部医学科卒業。日本外科学会認定外科専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士
札幌いしやま病院 札幌市中央区南15条西10丁目4-1

http://ishiyama.or.jp/




誤解していませんか?便秘や快便にまつわる「思い込み」

 新型コロナウイルスの感染予防で、外出を控えたりリモートワークになったりで、運動不足で便秘がちという悩みを聞きます。また、座りっぱなしの時間が長くなることで、肛門周囲に負担がかかってうっ血(血液の流れが滞ること)が起こり、おしりの不調を訴える声もよく聞きます。日々、患者さんからおしりやおなかのトラブルについて、いろいろなご質問を受けていますが、患者さんが良かれと思ってやっている習慣が裏目に出ていることが少なくありません。

 便秘や下痢のとき、便が出るまで長時間いきみ続けたり、便意がないのにトイレに長居したりする人が多いですが、これは肛門に負担をかける悪習慣です。肛門周囲のうっ血の原因となり、痔の引き金になります。5分座っても、それ以上便が出なければ、一度トイレを出ましょう。再び便意をもよおしたとき、トイレに戻ればいいのです。1回の排便で全部を出し切る必要はありません。トイレに5分以上座ることをやめるだけで、痔の予防や症状の軽快につながります。

 便秘に悩む人の中には「毎日排便しないといけない」と思い込んでいる人もいますが、それは誤解です。

 3日に1回程度の排便でも不快な症状がなく、すっきりとバナナ状の便が出ているのであれば問題はありません。毎日便が出ないというだけで自分が便秘と思い込み、便秘薬を常用し、下痢を起こしている患者さんもよく見受けられますので、十分ご注意ください。

 便秘の解消やおなかの張りを軽減するために、食事回数を減らす人がいますが、これも逆効果です。便通を整えるには、便の量を増やすことが大切。便は食事からつくられるので、食物繊維が豊富な食事をしっかり取るのが正解です。

 

 
市販薬の長期服用は注意が必要

 

 市販の便秘薬を服用している人も多いと思いますが、薬の選び方や使い方を間違えると、場合によっては、便秘を解消するどころか悪影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。特に避けたいのは、大腸を刺激する作用を持つ便秘薬の長期服用です。繰り返し使うと耐性が起こって、薬を飲んでも効果が得にくくなってきますし、自力で排泄する力も弱まってきます。

 パッケージに「漢方薬」「生薬由来」「植物性」などと書いてあると体にやさしそうですが、そういった便秘薬の中にもダイオウやアロエなど大腸刺激性の成分を含んだものもあります。市販薬は一時的に使うものと考えた方が良いでしょう。数週間薬が手放せないようなときは、専門の医療機関にかかることをお勧めします。

 

 
意外と知られていない温水洗浄便座の正しい使い方

 

 シャワートイレ(温水洗浄便座)の間違った使い方が、肛門周囲のかゆみ、皮膚炎、真菌などの感染症など、おしりのトラブルを招いているケースも非常に多いです。そのほとんどは「洗い過ぎ」によって、皮膚を守るバリア機能を担っている皮脂や常在菌を洗い流してしまっていることが原因です。また、水圧の刺激を排便を促す目的で使っている人もいますが、習慣化すると便意を感じる力が弱まり、水圧がないと排便ができない、便を出せない、となってしまいます。

 シャワートイレは、①水圧は一番弱くする、②水流を肛門(の中)に直接当てない(入れない)、③洗浄は10秒以内にする、というのが正しい使い方です。肛門のまわりはとてもデリケートな部位。慣れるまでは物足りなさを感じるかもしれませんが、これでも十分に肛門周囲の清潔を保つことができます。正しく、上手に使って、おしりのトラブルを防止してください。

2021/03/19

胃食道逆流症(GERD)ってどんな病気?

佐野内科医院 佐野 公昭 院長 


佐野内科医院

佐野 公昭 院長
●1984年岩手医科大学卒業。北大大学院修了。日本内科学会認定総合内科専門医。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士
佐野内科医院 札幌市中央区南5条西15丁目1-6

http://www.sano-naika-clinic.com/





GERD(胃食道逆流症)ってどんな病気?

 胸がむかむかする胸やけや、酸っぱいものがこみ上げてくる呑酸(どんさん)。これらの症状は胃酸が胃から食道に逆流して起こる「GERD=ガード」の可能性があります。

 GERDは「胃食道逆流症」の英語の頭文字をとった略語で、胃の内容物が食道に逆流して起こる病気の総称です。胃内容物の食道への逆流が頻繁に起こるようになると、胃液の中の酸や消化酵素のために、胸やけや呑酸が起こります。また、胃酸のために食道粘膜がただれて食道炎が起こる場合もあります。そのほか、胸痛、ぜんそく、咽喉頭部異常感、中耳炎、歯の酸蝕症といった食道以外の臓器の病気や症状と関係しているのではないかと言われています。

 逆流する主な原因は、食道と胃の間を閉じている下部食道括約筋部の衰えです。年齢を重ねるにつれてこの筋肉部が弱まって、食道と胃の間が開き、胃酸が逆流しやすくなります。加齢や腹圧の上昇などによって、胃が食道側に飛び出す「食道裂孔ヘルニア」も原因の一つです。内服薬が関係する場合もあります。

 近年、GERDの患者数は著しく増加し、成人の約1割がかかっていると推定されます。その理由として、高齢社会の進展、食生活の欧米化、肥満者の増加のほか、ピロリ菌の保有率が減ったことが挙げられます。胃がんの原因になるピロリ菌の感染減少は良いことですが、ピロリ菌のいない健康的な胃は胃酸が出やすいので、結果的にGERDの増加につながっています。

 GERDは睡眠障害など生活の質を低下させ、毎日の仕事にも影響を及ぼします。より良い生活を保つためにも、できるだけ早く正しい診断を受け、適切な治療を始めることが大切です。

 

GERDの診断と治療

 

 診断に重要なのは患者さんの自覚症状です。まず問診を行い胸やけの有無やどのような時に症状が出るのかなどを確認します。GERDを疑う場合に用いられる問診票はいくつか種類がありますが、どれも初期診断に有用なことが分かっています。いくつかの問診票は症状の頻度を点数化していて治療の効果判定にも有用です。GERDを診断するためには、内視鏡検査が必要になります。どうしても検査ができない場合には内服薬による治療を先に行ってみることもありますが、短期間の服用にとどめ、症状が再発する場合には必ず検査を受けて下さい。特殊な検査として24時間食道インピーダンス・pHモニタリングと言って食道への胃酸、胃液や食物残渣などの逆流の有無を判別する検査を行う場合もあります。

 原因や重症度など、段階によりさまざまな治療法や治療の手順がありますが、第一の治療は生活習慣の改善です。脂肪の多い食事、甘いものの食べ過ぎは控えた方がいいでしょう。また、食後すぐに横になるのをやめ、就寝の少なくとも2時間前、できれば3時間前からはものを食べないようにします。就寝時は頭を高くしたり、体の左側を下にする姿勢にしたりすると逆流しにくくなります。肥満やたばこも良くありません。

 第二の治療は薬物療法です。胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、その強力な作用で症状を改善させる代表格です。近年は、PPIの中でより強く酸分泌を抑えるカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P‐CAB)という薬剤が使われるケースが増えてきました。このほか、食道の粘膜を保護する薬や胃の動きをよくする薬、漢方薬なども使います。自覚症状や食道炎が改善した後にさらに薬物療法を続けるかどうかは、患者さんごとに判断します。再発が多い病気なので、主治医とよく相談したうえで、ご自身に合った薬の飲み方をしてください。

 内科治療で思わしい改善が認められない場合、胃食道逆流を起因とした喘息や嗄声、咳嗽、胸痛、誤嚥など食道以外の症状を有する場合は外科治療が考慮されます。以前は開腹術が行われていましたが、最近は腹腔鏡を用いた手術や内視鏡的な治療など体に負担の少ない治療法が主流になってきています。

2021/02/20

うつ病の行動活性化療法

 

岡本病院 鈴木 志麻子 医師




医療法人社団正心会

岡本病院

鈴木 志麻子 医師
●精神保健指定医・日本精神神経学会精神科専門医・医学博士
医療法人社団正心会 岡本病院 札幌市中央区北7条西26丁目3番1号

http://www.okamoto-hp.com/





[うつ病の行動活性化療法]どのような治療法ですか

 うつ病に効果がある心理療法の一つです。うつ病では、悲観的な気分と「きっとうまくいかない」「やる気が起きないからできない」等の囚(とら)われ(認知のゆがみ)から行動を起こせず、その結果「今日も何もできなかった」「自分はダメだ」と更に気分が落ち込む悪循環に陥りがちです。 

 そこから抜け出すために、この治療法では「気分」や「認知」に働きかけるのではなく、 「行動パターン」を変えることで気分を改善することに取り組みます。日本では、カウンセリングやデイケアなどで実施されている場合が多いようです。

 

治療の流れを教えてください

 

 「活動(行動)記録表」を用いて、一時間区切りで「やったこと」と「その時の気分(点数化)」を毎晩記入していきます。一週間分を振り返り、気分の良くなる行動と悪くなる行動を洗い出します。自分の行動パターンを眺めると、活動と気分の色々な関係に気づくでしょう。意外なことが気分転換になる、やってみたら案外楽しかった、○時までに寝た方が調子がいい・・・等。その上で、気分が良くなる行動が多くなるように翌週のスケジュールを組み立て、それにチャレンジするサイクルを繰り返していきます。

 さらに「どんな行動が気分を良くするか」を試してみて(行動実験)、行動のレパートリーを増やしていきます。以前やれていた活動をリストアップし、簡単なことから再び取り組んでみるのも良いでしょう。難易度が高い活動の場合は、小さなステップに分割するのがコツです。例えば「服を買いに出かける」という活動は〈外出に必要な持ち物をそろえる〉〈バスの時刻を調べておく〉〈外出着に着替える〉〈玄関から出る〉…など、出来るだけ細かく分けることで、取り組みやすくなります。こうして「意外と悪くなかった、出来た」という実感を重ねることで、気分を改善していきます。

 

気をつける点はありますか

 

 「調子の良い時は行動する、悪い時は行動しない」というパターンには要注意です。そうした「症状中心」の生活を続けていると、症状に振り回される感覚が強まり、自信もなくなっていきます。気分が悪い時は悪いなりに、まずは小さなことからやってみることが大切です。

 また、この治療の肝心なところは、単に活動量を増やすことではありません。自分の本来の目的や人生で大切にしたい事(例:復職する、家族が仲良く過ごす、趣味に打ち込める等)に近づく行動を増やすことにあります。ですがそれに伴う苦痛のために、やるべきことを避けたり別の無駄な活動に没頭したりといった、「回避パターン」に陥ることがあります。その問題の克服には、「自分が大切にしている価値は何か」を改めて見つめ直し、行動の軸にすえる作業が必要となります。

 

誰でも取り組めますか

 

 急性期で病状が重い時は避けるべきです。また、周囲の人がやみくもに楽しいことをやらせて効果があるものでもありません。しかし、回復期に入った方や軽度の抑うつ状態が長引いている方、鬱々(うつうつ)とした毎日を変えたいと思う方では、取り組んでみても良いかもしれません。

 この治療の情報はインターネット上にもいくつかありますし、自分で取り組むための本も出版されています。治療中の方、あるいは自分ではうまく出来ない場合には、主治医や専門家に相談することをお勧めします。

 

参考文献:「うつ病の行動活性化療法」岡本泰昌、医学のあゆみ、242巻7号 p505-509 ’2012年、「行動活性化療法」鈴木伸一、臨床精神医学41巻8号、p1001-1005 ’2012年

2021/01/20

呼吸器疾患の重症化リスク(2021.1.20記)

大空会大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

医療法人社団

大空会大道内科・呼吸器科クリニック

大道 光秀 院長
●1981年札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院第三内科、札幌鉄道病院呼吸器科主任医長などを経て、2001年大道内科・呼吸器科クリニックを開設。日本呼吸器学会認定呼吸器専門医。日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医。日本感染症学会認定感染症専門医。医学博士
医療法人社団 大空会 大道内科・呼吸器科クリニック

 札幌市中央区北3条西4丁目 日本生命札幌ビル3階

https://www.ohmichi.or.jp/




新型コロナ「正しく恐れて」呼吸器疾患の重症化リスク

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関してこれまでのデータや研究からその特徴の一端が分かってきました。確かな知識を持ち対策する「正しく恐れる」心構えが大切です。

 新型コロナは患者さんの8割が軽症のまま回復する一方で、2割は中等症や重症になるとされています。重症化しやすいのは、高齢者▽肥満▽糖尿病、高血圧、心血管疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの基礎疾患がある▽透析患者▽免疫抑制剤や抗がん剤を服用している──といった人たちです。

 今回は、COPDや気管支ぜんそくなど呼吸器疾患と新型コロナとの関連についてお話ししたいと思います。

 

COPDと新型コロナ

 

  COPDは、酸素を取り込むのに必須の肺胞という肺の部分がこわれ、また気道の空気の流れが慢性的に悪くなり、徐々に呼吸機能が低下していく病気で、主な症状はせきやたん、労作時の息切れなどです。

 COPDの患者さんは、新型コロナへの感染しやすさは正常人と変わりませんが、いったん感染すると、人工呼吸器をつけるほど重症化する割合がCOPDを持たない人に比べ、2~4倍高いことが報告されています。また、COPDの原因である喫煙も重症化する要因です。 正常の肺では、肺炎をおこしても、肺炎を起こしてない残りの肺で酸素を取り込む予備機能はあるのですが、COPDで壊された肺の残りの部分にウイルスがついて肺炎を起こせば、もともとの肺の予備機能が少なく、十分な酸素を取り込む事ができず、呼吸状態が急速に悪化します。ですから、COPDの患者さんでは定期の吸入薬を継続し、もともとの肺の予備機能を維持するようこころがけてください。

 

ぜんそくと新型コロナ

 

 ぜんそくの治療をしていても新型コロナへのかかりやすさは通常の人と同じです。またCOPDと違い、ぜんそくの患者さんは新型コロナ感染の重症化リスクではありません。

 一般に内服や注射などの全身にいきわたるステロイドは感染症を悪化させると言われていますが、ぜんそく治療に用いる「吸入ステロイド」は全身にいかず、新型コロナへの感染リスクを高めることは全くありませんし、抵抗力・免疫力の低下など全身への影響が出る心配も全くありません。

 実際に、定期で通院し、ぜんそくできちんと「吸入ステロイド」を吸入している患者さんでは新型コロナに感染した方は非常に少ないようです。一方、ぜんそくで治療を中断し、数か月~数年たった患者さんが、発熱や咳の悪化のため久しぶりに受診し、唾液のPCRでコロナ陽性となった患者さんは多いようです。その場合、咳がひどくても、通常は効果のあるステロイドの点滴もちゅうちょせざるを得ず、再開した吸入薬が効くまでの間苦しいのを我慢しなくてはなりません。また現在、コロナ患者さんの対応で通常の患者さんの入院のベッドが不足しており、ひどく悪化しても治療のために入院をする事は大変困難です。

 

適切な治療の継続が重要

 

 COPDやぜんそくの患者さんにとって、コロナ禍で一番のリスクになりうることは、治療を中断し、病状がコントロールできていない状態です。また、新型コロナが蔓延している間は、特例で(通常は医療法に抵触しますが)、落ち着いている患者さんでは電話をいただければ薬を送る事も出来ます。感染リスクよりも、COPDやぜんそくの治療を中断する不利益の方がずっと大きいです。自己判断で治療を中断するのではなく、適切な治療を継続することが何よりも重要です。

2020/12/19

「回復期リハビリテーション」とは?<改訂版>

花川病院 菅沼宏之 院長 


医療法人 喬成会

花川病院

菅沼宏之 院長
●北海道大学卒。日本リハビリテーション医学会指導医、認定臨床医、リハビリテーション科専門医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
花川病院 石狩市花川南7条5丁目2

http://kyouseikai.jp/hanakawahp/




「回復期リハビリテーション」とは?

 事故に遭ったり病気で倒れたりした直後を「急性期」と呼びます。急性期に手術など必要な処置をし、容体が落ち着いたら、最長6カ月の「回復期」に入ります。ここで治療後に低下した能力を回復するため、さまざまな専門職が共同して集中的なリハビリを実施するのが、回復期リハビリテーションです。

 以前は「手術後は安静第一」と考えられていましたが、世界的に研究が進む中で「手術直後でも起き上がって動いた方が回復は早い」ということが明らかになっています。在宅復帰に効果を上げるためには、回復期リハビリを少しでも早く集中的に行うことが非常に重要です。

 

リハビリはどのように進めますか。

 

 回復期リハビリの対象となるのは、主に脳卒中や頭部外傷、交通事故による複雑骨折、外科手術などの治療の安静により生じた廃用症候群を有する患者さんなどです。脳卒中は5〜6カ月間、骨折は2〜3カ月間など、疾患に応じて入院できる上限が決まっており、最大1日9単位(1単位20分、最大3時間)まで保険診療が認められています。

 座る、立つ、歩くといった基本動作の訓練から始め、食事や入浴、着替え、排泄など日常生活に必要な動作が自分でできるような訓練へと進めていきます。自宅・社会復帰を目的としますが、家庭環境や仕事内容など条件は人それぞれですので、患者さんの病状や要望、生活背景などに応じて個別に目標が設定され、一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立てます。

 回復期リハビリには、医師を中心に多職種が密接に連携するチーム医療が不可欠です。施設の体制により異なりますが、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、医療ソーシャルワーカーらが連携して一つのチームとなり、入院中のリハビリだけでなく、退院した後も快適な暮らしができるようサポートしていきます。

 

ロボットによるリハビリについて教えてください。

 

 近年、リハビリを支援するロボットが次々に登場して効率的なリハビリに貢献しています。特に注目を集めているのが、トヨタ自動車と藤田医科大学(愛知県豊明市)とが共同開発した「下肢麻痺(まひ)リハビリ支援ロボット」です。脳卒中などで麻痺した脚にロボット脚を装着し、本体の可動式床の上を歩行練習するもので、2017年秋に登場しましたが、20年2月より後続機種の医療現場への導入が進んでいます。患者さんが転倒することなく、運動機能の回復を効率的に図れる機能がさらに向上し、患者さんのモチベーション維持を支援する機能などが追加されたことで、患者さんの障害の程度に応じ、より長時間・多数歩の練習支援が可能になっています。従来の歩行リハビリや従来機種によりリハビリ支援と比べ、各療法士(PT、OT、ST)の業務負担を軽減しながら、患者さんの回復速度の向上や歩行機能の改善が多数報告されています。

 人と人との触れ合いが重要視されるリハビリの現場で、すべての手技・施術をロボットに置き換えることはできません。理学療法士、作業療法士の専門的な知識と技術は不可欠ですが、その上で、リハビリ支援ロボットを用いて人間の足りない部分を補うことで、より安全性・効率性の高いリハビリを実現しています。

 

施設を選ぶ時のポイントについて教えてください。

 

 リハビリは量と質の両面を充実させることが非常に重要です。まず量の面ですが、各療法士の数が多く、患者さん1人あたりに十分なリハビリを提供できているか。また、リハビリは切れ目なく、継続して行うことが大切なので、休日も休まずリハビリが提供されているかがポイントです。次に質に関してですが、チーム医療が徹底されていることが第一。すべての職種が相互に他領域への理解を深めることで、全スタッフが患者さんの全体像を描けるようになるからです。リハビリの専門医が勤務していること、PT、OT、STがバランスよく配置されていることもポイントになります。

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