2021/01/20

呼吸器疾患の重症化リスク(2021.1.20記)

大空会大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

医療法人社団

大空会大道内科・呼吸器科クリニック

大道 光秀 院長
●1981年札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院第三内科、札幌鉄道病院呼吸器科主任医長などを経て、2001年大道内科・呼吸器科クリニックを開設。日本呼吸器学会認定呼吸器専門医。日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医。日本感染症学会認定感染症専門医。医学博士
医療法人社団 大空会 大道内科・呼吸器科クリニック

 札幌市中央区北3条西4丁目 日本生命札幌ビル3階

https://www.ohmichi.or.jp/




新型コロナ「正しく恐れて」呼吸器疾患の重症化リスク

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に関してこれまでのデータや研究からその特徴の一端が分かってきました。確かな知識を持ち対策する「正しく恐れる」心構えが大切です。

 新型コロナは患者さんの8割が軽症のまま回復する一方で、2割は中等症や重症になるとされています。重症化しやすいのは、高齢者▽肥満▽糖尿病、高血圧、心血管疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの基礎疾患がある▽透析患者▽免疫抑制剤や抗がん剤を服用している──といった人たちです。

 今回は、COPDや気管支ぜんそくなど呼吸器疾患と新型コロナとの関連についてお話ししたいと思います。

 

COPDと新型コロナ

 

  COPDは、酸素を取り込むのに必須の肺胞という肺の部分がこわれ、また気道の空気の流れが慢性的に悪くなり、徐々に呼吸機能が低下していく病気で、主な症状はせきやたん、労作時の息切れなどです。

 COPDの患者さんは、新型コロナへの感染しやすさは正常人と変わりませんが、いったん感染すると、人工呼吸器をつけるほど重症化する割合がCOPDを持たない人に比べ、2~4倍高いことが報告されています。また、COPDの原因である喫煙も重症化する要因です。 正常の肺では、肺炎をおこしても、肺炎を起こしてない残りの肺で酸素を取り込む予備機能はあるのですが、COPDで壊された肺の残りの部分にウイルスがついて肺炎を起こせば、もともとの肺の予備機能が少なく、十分な酸素を取り込む事ができず、呼吸状態が急速に悪化します。ですから、COPDの患者さんでは定期の吸入薬を継続し、もともとの肺の予備機能を維持するようこころがけてください。

 

ぜんそくと新型コロナ

 

 ぜんそくの治療をしていても新型コロナへのかかりやすさは通常の人と同じです。またCOPDと違い、ぜんそくの患者さんは新型コロナ感染の重症化リスクではありません。

 一般に内服や注射などの全身にいきわたるステロイドは感染症を悪化させると言われていますが、ぜんそく治療に用いる「吸入ステロイド」は全身にいかず、新型コロナへの感染リスクを高めることは全くありませんし、抵抗力・免疫力の低下など全身への影響が出る心配も全くありません。

 実際に、定期で通院し、ぜんそくできちんと「吸入ステロイド」を吸入している患者さんでは新型コロナに感染した方は非常に少ないようです。一方、ぜんそくで治療を中断し、数か月~数年たった患者さんが、発熱や咳の悪化のため久しぶりに受診し、唾液のPCRでコロナ陽性となった患者さんは多いようです。その場合、咳がひどくても、通常は効果のあるステロイドの点滴もちゅうちょせざるを得ず、再開した吸入薬が効くまでの間苦しいのを我慢しなくてはなりません。また現在、コロナ患者さんの対応で通常の患者さんの入院のベッドが不足しており、ひどく悪化しても治療のために入院をする事は大変困難です。

 

適切な治療の継続が重要

 

 COPDやぜんそくの患者さんにとって、コロナ禍で一番のリスクになりうることは、治療を中断し、病状がコントロールできていない状態です。また、新型コロナが蔓延している間は、特例で(通常は医療法に抵触しますが)、落ち着いている患者さんでは電話をいただければ薬を送る事も出来ます。感染リスクよりも、COPDやぜんそくの治療を中断する不利益の方がずっと大きいです。自己判断で治療を中断するのではなく、適切な治療を継続することが何よりも重要です。

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