2021/04/20

便秘や快便にまつわる「思い込み」

札幌いしやま病院 河野 由紀子 医局長 




札幌いしやま病院

河野 由紀子 医局長
●2005年札幌医科大学医学部医学科卒業。日本外科学会認定外科専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士
札幌いしやま病院 札幌市中央区南15条西10丁目4-1

http://ishiyama.or.jp/




誤解していませんか?便秘や快便にまつわる「思い込み」

 新型コロナウイルスの感染予防で、外出を控えたりリモートワークになったりで、運動不足で便秘がちという悩みを聞きます。また、座りっぱなしの時間が長くなることで、肛門周囲に負担がかかってうっ血(血液の流れが滞ること)が起こり、おしりの不調を訴える声もよく聞きます。日々、患者さんからおしりやおなかのトラブルについて、いろいろなご質問を受けていますが、患者さんが良かれと思ってやっている習慣が裏目に出ていることが少なくありません。

 便秘や下痢のとき、便が出るまで長時間いきみ続けたり、便意がないのにトイレに長居したりする人が多いですが、これは肛門に負担をかける悪習慣です。肛門周囲のうっ血の原因となり、痔の引き金になります。5分座っても、それ以上便が出なければ、一度トイレを出ましょう。再び便意をもよおしたとき、トイレに戻ればいいのです。1回の排便で全部を出し切る必要はありません。トイレに5分以上座ることをやめるだけで、痔の予防や症状の軽快につながります。

 便秘に悩む人の中には「毎日排便しないといけない」と思い込んでいる人もいますが、それは誤解です。

 3日に1回程度の排便でも不快な症状がなく、すっきりとバナナ状の便が出ているのであれば問題はありません。毎日便が出ないというだけで自分が便秘と思い込み、便秘薬を常用し、下痢を起こしている患者さんもよく見受けられますので、十分ご注意ください。

 便秘の解消やおなかの張りを軽減するために、食事回数を減らす人がいますが、これも逆効果です。便通を整えるには、便の量を増やすことが大切。便は食事からつくられるので、食物繊維が豊富な食事をしっかり取るのが正解です。

 

 
市販薬の長期服用は注意が必要

 

 市販の便秘薬を服用している人も多いと思いますが、薬の選び方や使い方を間違えると、場合によっては、便秘を解消するどころか悪影響を及ぼすこともあるので注意が必要です。特に避けたいのは、大腸を刺激する作用を持つ便秘薬の長期服用です。繰り返し使うと耐性が起こって、薬を飲んでも効果が得にくくなってきますし、自力で排泄する力も弱まってきます。

 パッケージに「漢方薬」「生薬由来」「植物性」などと書いてあると体にやさしそうですが、そういった便秘薬の中にもダイオウやアロエなど大腸刺激性の成分を含んだものもあります。市販薬は一時的に使うものと考えた方が良いでしょう。数週間薬が手放せないようなときは、専門の医療機関にかかることをお勧めします。

 

 
意外と知られていない温水洗浄便座の正しい使い方

 

 シャワートイレ(温水洗浄便座)の間違った使い方が、肛門周囲のかゆみ、皮膚炎、真菌などの感染症など、おしりのトラブルを招いているケースも非常に多いです。そのほとんどは「洗い過ぎ」によって、皮膚を守るバリア機能を担っている皮脂や常在菌を洗い流してしまっていることが原因です。また、水圧の刺激を排便を促す目的で使っている人もいますが、習慣化すると便意を感じる力が弱まり、水圧がないと排便ができない、便を出せない、となってしまいます。

 シャワートイレは、①水圧は一番弱くする、②水流を肛門(の中)に直接当てない(入れない)、③洗浄は10秒以内にする、というのが正しい使い方です。肛門のまわりはとてもデリケートな部位。慣れるまでは物足りなさを感じるかもしれませんが、これでも十分に肛門周囲の清潔を保つことができます。正しく、上手に使って、おしりのトラブルを防止してください。

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