<便秘、新薬で治療に幅>
排便障害には便秘や下痢、便失禁などがありますが、その症状・程度・原因に応じて適切に治療することが必要です。
例えば一言で便秘といっても、便が出ない「排便回数減少型」や便が出せない「排便困難型」では対処方法が異なります。
「排便回数減少型」では、そもそも良好な便ができるような食事をしていない、生活習慣や加齢によって腸の動きが弱い、など原因によって対処方法や使用すべき薬剤も異なってきます。
「排便困難型」では便が固くて出しづらい場合や腸の動きが弱くて出しづらい場合などのほかに、排便のタイミングが悪い、腹圧をかけて力む際の排便動作が誤っている、などが背景にあることもあります。便秘では、医療機関を受診せず、市販薬を試す人が少なくないですが、使い方に気を付ける必要があります。市販の便秘薬には「刺激性下剤」と「非刺激性下剤」の2種類があります。刺激性はセンナ、ダイオウ、アロエなどの生薬を成分とし腸を刺激して排便を促します。一方、非刺激性の市販薬は酸化マグネシウムが有効成分で、腸内の水分を増やして便を軟らかくします。刺激性下剤は使い続けると効きにくくなったり、腸が黒くなったり、また便秘症状や腹痛を悪化させる可能性があります。市販薬を使うのであれば、まずは非刺激性下剤の使用をお勧めします。
近年は、小腸や大腸の粘膜に作用して便を軟らかくしたり腸の動きを促進したり、直腸での便意を生じやすくする新薬も登場し、処方薬の選択肢も数多くあります。患者さんの便秘の原因に応じて薬剤を使い分けていますので、一度専門病院を受診し、便秘の原因やタイプを正確に診断してもらうのがいいでしょう。なかなか改善しない排便障害には排便造影や肛門内圧検査などの専門的な検査が有用な場合もあります。
便秘治療の基本は、食事や水分をしっかり取ることや適度な運動、決まった時間にトイレに行く習慣をつけることなどの指導です。それだけで改善する人も多いです。
<背後に潜む病気に注意>
たかが便秘や下痢と思うかもしれませんが、大腸がんなど他の病気が隠れているケースも珍しくありません。
大腸がんになる人の数は増え続けていて、男女合わせた罹患者数では大腸がんが各種がんの中で1位です。大腸がんは早期のうちはほぼ自覚症状がないのですが、最初の症状は排便に出ます。便秘がちで時々出血しているものを痔と思い込んで病院受診せず、そのままにしているうちに大腸がんが進行してしまい、手術で取り切れる時期を逃してしまったという例もあります。大腸がんは早期で発見して適切に治療すれば根治が期待できるがんです。いかに早く病気の存在に気付くかが重要なのです。
便秘や下痢、腹痛、血便が続くなど、排便状況・状態が変わった時は、放置せず、早めに医師に相談してください。
医療法人 藻友会
札幌いしやま病院
札幌いしやまクリニック
秋月 恵美 医師
●日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医