<リハビリの質で回復具合に差>
回復期リハビリテーション病棟は、脳血管疾患や骨折などで、手術など急性期の治療を終え、病状が安定し始めた患者さんが集中的にリハビリを受けるための病床です。回復期は、後遺症のある人にとって最も回復が期待できる重要な時期で、低下した能力の回復や日常生活動作の改善など、日常・社会生活に復帰することを目指します。
医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護福祉士、医療ソーシャルワーカーなど専門職がチームとなり、患者さんの病状や家庭の状況などの情報を共有し、それぞれに最適なリハビリプランを立てます。リハビリ医はこの全体を統括し、「オーケストラの指揮者」のような役割を担います。高齢化が進む中で、より回復期リハビリの需要は増しています。しかし、課題となるのは質の向上です。リハビリの成否は、患者さんのその後の生活を大きく左右します。歩けるはずの人が寝たきりになってしまうこともあるのです。だからこそ、リハビリがどの程度の回復をもたらすかの見通しを立て、患者さんそれぞれの退院後の目標に応じたリハビリが出来るかが重要です。
<最新の神経リハビリ高い効果>
近年、リハビリの領域は飛躍的に進歩しています。その一つが、最新の神経科学や脳科学の知見・エビデンス(科学的根拠)に基づいた「神経(ニューロ)リハビリテーション」です。例えば、麻痺した手足など障害が出ている部位だけでなく、それらに運動の指令を出す神経や脳のメカニズムにも焦点を当てた治療が行われています。発症から数年たった患者さんでも効果が確認されるなど、従来のリハビリの常識を覆す可能性を秘めています。受けられる治療内容はそれぞれの病院で若干バリエーションがありますが、障害を乗り越えるリハビリ医療が充実してきています。
このように、進歩するリハビリ医療ですが、機能が回復する患者さんがいる一方で、リハビリの効果が限定的な患者さんもいます。これからの生活にさまざまな不安や心配を抱える、またご自身の障害を受け入れられない患者さんに対し、「障害の受容」を強制するのではなく、その状態を認めて支え、患者さんの心に寄り添いながら、本当の意味での生活の質向上につながる「人生を諦めないリハビリ」「後悔しないリハビリ」を提案していきます。
社会医療法人 交雄会メディカル 交雄会新さっぽろ病院
井 上 勲 神経リハビリテーション部長
1989年九州大学医学部医学科卒業。九州大学病院文部教官(神経内科)、米国ワシントン大学、脳神経センター大田記念病院脳卒中診療部長、社会医療法人慈泉会相澤病院リハビリテーション科医長、社会医療法人青洲会福岡青洲会病院脳神経内科部長・副院長など。日本内科学会認定総合内科専門医。日本神経学会認定神経内科専門医。医学博士。
●社会医療法人 交雄会メディカル 交雄会新さっぽろ病院
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