2023/03/19

「温水洗浄便座」おしりの洗い過ぎに注意

「使い方で、便漏れや皮膚炎も」

 ノズルから噴射される水でおしりをきれいにする「温水洗浄便座」。快適で気持ちがいいため、毎日習慣で利用している人も多いと思いますが、不適切な使い方を続けると、便漏れや肛門周辺のかゆみや痛みといったトラブルが起きることもあり、注意が必要です。
 2023年1月、温水洗浄便座が便漏れ(便失禁)の原因であると示唆する論文が発表されました。千葉の亀田メディカルセンターの消化器外科医師らによる研究で、便漏れの症状があると訴えた患者に対し、温水洗浄便座の使用をやめるように指導した結果、やめた患者のうち約38%で便失禁の症状がなくなったといいます。
 当院でも温水洗浄便座の使い過ぎが原因で受診する人は決して少なくありません。ただ、温水洗浄便座そのものが悪いわけではなく、使い方の問題です。間違った使い方としては、便意を催すために温水を当てたり、温水を当てながら排便したり、強い水圧で長時間当てたりしている例が挙げられます。こうした使い方をすると、肛門から直腸に入った洗浄水が便と混じり、しばらく時間がたってから漏れ出てくる場合があります。
 また、使い過ぎによって、肛門周辺の皮膚に炎症を起こす場合もあります。痛みやかゆみを伴い、「温水洗浄便座症候群」と病名も付いています。皮膚は油分を含んだ膜で守られていますが、洗い過ぎると皮脂は簡単に流されてしまいます。むき出しになった皮膚は傷つきやすく、皮膚が荒れると炎症を起こし、湿疹やひび割れの原因になります。


「洗浄は5秒程度、水圧も弱く」

 温水洗浄便座を使う場合は、洗浄時間は最大でも5秒程度にとどめ、水圧も一番弱くするのが望ましいです。水圧の刺激で便を出そうとせず、洗う時におしりの穴をキュッとすぼめ、温水が肛門や直腸の中に入らないようにしましょう。適切な使い方を意識すれば、便漏れや温水洗浄便座症候群の予防や改善につながります。痛がゆい、出血など肛門周辺にトラブルがある場合は使用を控え、専門医を受診してください。おしりの拭き方にも注意が必要です。ごしごし拭くと、皮膚を傷つけます。拭くのは3回程度にとどめ、それでも紙に汚れが付くようなら、紙を水で濡らし、やさしく押し当てるように拭きましょう。
 最後に、温水洗浄便座の使用について感染症を不安とする声がありますが、シャワー機能を介して新型コロナウイルスなどに感染する可能性は低いと考えます。「使わない」のではなく、「適切な使い方」を習慣にし、おしりの健康と快適さを保ってください。


 



医療法人 藻友会
札幌いしやま病院
札幌いしやまクリニック
石山 元太郎 理事長
日本外科学会認定外科専門医。日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医。
●札幌いしやま病院 札幌市中央区南15条西10丁目4-1
●札幌いしやまクリニック 札幌市中央区南15条西11丁目2-1
http://ishiyama.or.jp/






人気の投稿

このブログを検索