2023/04/20

病状により手術が必要な「黄斑前膜・黄斑円孔」

「硝子体手術が唯一の治療法」

 眼球はカメラと同じような構造になっています。瞳孔から入った光がフィルムの役割をする網膜に当たりますが、その真ん中を黄斑部と呼び、視力に関わる重要な部分です。
 この黄斑部に膜が張る病気を「黄斑前膜」といいます。目の中にあるゼリー状の硝子体が加齢とともに液化して網膜からはがれていきますが、その一部が残って徐々に膜になっていきます。

また、網膜裂孔、ぶどう膜炎などに関連して発症することもあります。初期は無症状で、健診や眼科を受診した時に偶然発見されることもあります。進行すると視力低下や変視症(物の形がゆがんで見えたり、物の大きさが変わって見えたりする)などの症状が出ます。治療法は硝子体手術となり、黄斑部の膜を直接取り除きます。手術によって視力の改善を期待できますが、変視症は残ることが多く、改善の程度には個人差があります。発症から長期間経過している場合や、すでに視機能障害が強い時には手術をしても改善しづらくなります。
 一方、黄斑部に円孔(あな)が開く病気を「黄斑円孔」といいます。硝子体が加齢により液化して網膜から分離していく時に、硝子体と黄斑部の接着が強く、網膜が牽引されることが黄斑円孔の主な原因です。自覚症状は変視症で始まり、進行すると視野の真ん中だけが見えなくなります。物がつぶれて見えたり、すぼんで見えたりするというのもよく聞かれる訴えです。初期の段階ではまれに自然と治ることもありますが、基本的に円孔は拡大して悪化していきます。治療はやはり硝子体手術となり、手術終了時に目の中に気体を注入し、術後一定期間はうつ伏せの体位をとらなくてはなりません。早くに手術をするほど円孔が塞がる確率は高く、視力の回復は良好です。長期間経過すると円孔は塞がりづらくなり、視力も戻らなくなります。

「適切な時期に診断して治療を」

 網膜の断層画像を撮影できる検査機器「光干渉断層計(OCT)」の普及によって、硝子体と網膜との関係が画像で明瞭に確認できるようになりました。これにより、黄斑前膜や黄斑円孔などの病態が明らかになり、診断や治療が大きく進展しました。両疾患とも完全な失明に至る病気ではありませんが、早期に見つけて手術のタイミングを逃さないことが、良好な視機能を維持するために重要です。進行具合や視力の経過を見て、主治医と手術時期について相談してください。
 片目だけ症状が出ている場合、両目を開けた状態では見え方の異常に気付かないこともあります。見え方に違和感を覚えた時には、片目ずつ異常がないかを確認してみてください。


大橋眼科

藤谷 顕雄 副院長
2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医
大橋眼科 北海道札幌市白石区本通6丁目北1-1
https://www.ohashi-eye.jp/


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