2023/02/19

感染性腸炎とは?治療と感染対策のポイント

「原因となる病原体は多種多様」

 感染性腸炎とは細菌やウイルス、寄生虫などの病原体が腸に感染してさまざまな消化器症状を引き起こす病気です。多くは食品や飲料水を通して経口的に病原体が体内に入ります。そのほか、病原体が付着した手で口に触れることによる感染、感染者の吐しゃ物や便の処理時の感染などがあります。
 病原体として、細菌ではカンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなどがあり、ウイルスではノロウイルスやロタウイルス、そのほか寄生虫ではアメーバ赤痢やランブル鞭毛(べんもう)虫などがあります。カンピロバクターでは鶏肉、サルモネラでは鶏卵、腸炎ビブリオでは魚介類、ノロウイルスは牡蠣などの二枚貝が主な感染の原因となります。
 一般的な症状としては、発熱を伴った下痢、腹痛、吐き気・嘔吐などです。ウイルス性では吐き気や嘔吐症状が強いのが特徴で、発熱はあっても38℃以下の場合が多いです。感染性腸炎は数日で治ることが多いのですが、病原体の種類によっては下痢が長引いたり、下血・血便を伴うなど重症化する場合もあります。病状や患者さんの様子により、必要な対応が変わってくるので注意が必要です。


「対症療法が中心、水分補給が大切」

 診断には問診が大切です。症状とその発病時期、いつ頃、どのようなものを食べたか、同じような症状の人はいないか、最近の旅行歴などを聞くこともあります。比較的潜伏期間の長いカンピロバクター(2〜10日)、腸管出血大腸菌(4〜8日)などでは患者さん自身が感染性腸炎と気付かないこともあり、非感染性腸炎との鑑別が必要です。
 治療は症状に応じた対症療法が中心となります。腸内環境を回復させたり病原性菌の増殖を抑えるために乳酸菌製剤などの整腸剤を用いながら、患者さんの状態や病原体の種類を考え制吐薬(吐き気止め)、痛み止めの一種である鎮痙(ちんけい)剤の投与などを考えます。抗菌薬はなるべく使用を控えます。下痢や嘔吐、発熱などのために脱水症状にならないよう、経口補水液やスポーツドリンクなどでの水分補給が大切です。ペットボトルから直接飲むのではなく、常温にして飲む分だけコップに注いで少しずつ飲むのがポイントです。嘔吐のため経口的に十分摂取できない場合には点滴による加療を行います。
 うつらない・うつさないための対策も重要です。食事や調理の前後やトイレに行った後には手洗いを徹底すること。また、下痢や嘔吐が続く間は、集団生活をできるだけ避け、調理などの食品を取り扱う作業は控えましょう。そのほか、トイレはふたを閉めてから流す、タオルの共有を避ける、感染者は最後に入浴することも意識してください。




佐野内科医院
佐野 公昭 院長
1984年岩手医科大学卒業。89年北海道大学大学院修了。北海道大学病院、愛育病院、市立札幌病院などを経て、2008年より現職。日本内科学会認定総合内科専門医。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士
佐野内科医院
 札幌市中央区南5条西15丁目1-6
http://www.sano-naika-clinic.com/



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