2023/01/22

命を守る40代からの胃・大腸内視鏡検査

「がん検診は不要不急ではない」

 国立がん研究センターがん統計による2021年のがん死亡統計で胃がんは男性では3位、女性では5位。大腸がんは男性2位、女性1位です。日本では毎年約100万人ががんと診断されますが、医療の進歩によって、早く治療を開始すれば「治る病気」になってきました。早期に発見された胃がんや大腸がんの10年生存率は9割に上ります。ただし、がんは早い段階では自覚症状がほとんどありません。だからこそ、がん検診を定期的に受けることで、症状がないうちにがんを見つけることが大切なのです。
 新型コロナを理由に検診の受診を見送り、次の受診までの期間が空いてしまうと、早い段階で発見できたはずのがんが進行した状態で見つかる可能性が高くなります。がん検診は不要不急の外出ではなく必要な外出です。がんの早期発見を逃さないために、コロナ禍でも検診を控えないでほしいと強く思います。

「進歩する胃・大腸内視鏡検査」

 胃がんや大腸がんを早期に発見する検査で、最も診断精度の高いものは「胃・大腸内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)」です。体の内部を直接見られるため、がんの見落としのリスクが低いのが利点です。近年は、人工知能(AI)を活用して大腸カメラの精度をさらに高めるシステムの普及も進んでいます。AIが内視鏡画像を解析し、ポリープの可能性のある領域を検出すると、モニター画面に線で囲んで表示、音でも知らせるというもので、AIの画像解析が医師の肉眼での診断をサポートして医療の質の向上につながります。
 胃がん・大腸がんは男女とも40歳以降から急激に罹患率が高くなります。本人や家族の病歴などにより個人差はありますが、基本的には40歳を過ぎたら症状がなくてもまずは一度、それ以降は1年〜数年ごとの定期的な検査をお勧めします。
 胃カメラは、鼻から挿入する方法(経鼻内視鏡)で行われることが増えてきました。舌の根本にスコープが触れないため、ほとんど吐き気をもよおすことなく、挿入時の不快感が大幅に軽減されました。大腸カメラも器具や技術の進歩により、慣れている医師であれば痛みや不快感をほとんど感じさせることはありません。鎮静剤や鎮痛剤を用いて患者さんが眠っているうちに検査を終わらせる、より苦痛を少なくする方法も行われています。
 繰り返しになりますが、胃がん、大腸がんは発見の早さが生存率に大きく直結するがんです。「治せるがん」で命を落とさないよう、定期的にがん検診を受けてください。また、精密検査が必要とされたら先延ばしにしないこと。精密検査までががん検診です。





社会医療法人 交雄会メディカル
交雄会新さっぽろ病院
渡 二郎 院長
1986年旭川医科大学医学部卒業。旭川厚生病院消化器科、旭川医科大学第3内科、米ニュージャージー医科歯科大学消化器内科、兵庫医科大学消化管科教授、2019年4月より現職。日本消化器病学会認定消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医
社会医療法人 交雄会メディカル  交雄会新さっぽろ病院
 札幌市厚別区厚別中央1条6丁目2-5
https://www.kss-hp.or.jp/


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