2022/12/21

「見えない障害」高次脳機能障害とは?

「30万人が悩む認知機能の障害」

 高次脳機能障害は、交通事故のけが(頭部外傷)や脳卒中などの病気で、脳の一部が傷ついたことで起こる認知機能の障害です。症状は、①「忘れる」「覚えられない」などの記憶障害、②「ぼんやりしている」「作業を長く続けられない」などの注意障害、③「計画を立て物事を実行できない」などの遂行機能障害、④「感情を抑えられない」などの社会的行動障害──などがあり、脳のどこがダメージを受けるかで表れる症状が異なります。
 高次脳機能障害は外見からは障害が分かりにくいため、周囲に気付かれず、また本人も自覚しにくいこともあり、「見えない障害」ともいわれています。年齢を問わずに誰もがなり得る障害ですが、若い世代への理解・支援は特に難しく、学校や職場に復帰できても怠けていると判断され、休みがちになったり、退職を繰り返したりするケースも少なくありません。厚労省による調査では、2016年時点で全国に30万人以上の患者さんがいると推計されています。

「リハビリ、周囲の理解が大切」

 高次脳機能障害の症状は認知症の症状と似ていますが、認知症とは異なり専門的なリハビリで一定の回復が望めます。高次脳機能障害のリハビリは、急性期や回復期の入院中から始めるのが理想で、退院後も続きます。記憶力を高めるリハビリなど個々の症状にあった訓練を行います。また、記憶を補うためにメモをとる、計画性を補うために工程表をつくる、などの代替補助手段も練習します。さらに日常生活や就学、就労に対する援助もリハビリには含まれます。時間はかかりますが、根気よく続けることで成果は上がります。
 見た目に分かりにくい障害だけに、家族や職場など周囲の理解と息の長い支援が非常に大切です。生活する地域の中で、年単位で支えていく体制が欠かせません。
 高次脳機能障害はまだまだ知名度が低いです。一人でも多くの方にこの障害について理解を深めていただき、高次脳機能障害の可能性がある人を取りこぼさずに、より多くの人が適切な診断や治療、リハビリを受けられるようになる社会・仕組みづくりが重要と考えます。
 リハビリの医療現場は日進月歩です。新しい治療法が数多く開発され、障害のある部位・領域にはよりますが、失われた機能の回復・改善も期待できるようになってきました。今はまだ「不治の後遺症」も近い将来に「治りうる症状」となる日がやってくるはずです。私たちリハビリ医療関係者も日々学び、進化し続けることが使命だと思います。






医療法人喬成会
花川病院
生駒 一憲副 理事長
奈良県立医科大学卒業。
日本リハビリテーション医学会認定リハビリテーション科専門医。
北海道大学名誉教授
医療法人喬成会花川病院
 石狩市花川南7条5丁目2番地
http://kyouseikai.jp/hanakawahp/

人気の投稿

このブログを検索