2022/09/18

増え続ける指定難病「IBD(炎症性腸疾患)」





札幌IBDクリニック
田中 浩紀 院長
●1999年札幌医科大学卒業。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医。医学博士。
札幌IBDクリニック 札幌市中央区南19条西8丁目1-18 山鼻ドクタータウン2F
https://sapicl.com/




くり返す下痢や腹痛は専門医へ

 IBD(炎症性腸疾患)とは大腸や小腸など消化管に慢性の炎症が起きる病気の総称です。IBDには「潰瘍性大腸炎(UC)」と「クローン病(CD)」という2つの病気があり、主な症状は下痢や腹痛、血便などです。UCは主に大腸中心に炎症が起き、CDは小腸や大腸のほか、口からお尻まですべての消化管に炎症が起きる可能性があります。罹患数が急増しており、最新の疫学調査によるとUCは約22万人、CDは約7万人いるとされます。

 IBDは症状が落ち着いている状態(寛解)と悪化している状態(再燃)を繰り返し、慢性の経過をたどる病気です。未だ完治させる治療法が見つかっていないため、発症時(診断時)に症状がある場合は適切な治療によって「寛解へ導く」こと、そして、継続的な治療で再燃をコントロール し、「寛解を維持する」ことが目標です。難病と聞いて落胆する患者さんも少なくありませんが、長期にわたり寛解を維持できれば、安定した毎日を送れます。

 そのために重要なのが「早期診断・早期治療」です。早期診断できれば、使える薬剤など治療の選択肢が広がり、また、治療が早ければ早いほど患者さんの生活の質を落とさずに高い治療効果を期待できます。繰り返す下痢や腹痛、血便は異変を告げるサインです。放置しないで専門医を受診してください。

 

新薬の登場で広がる選択肢

 

 IBDの診断に欠かせないのが内視鏡検査です。特にCD診療では、通常の内視鏡では観察が難しい小腸を調べることが重要で、バルーン内視鏡やカプセル内視鏡を使った検査を行います。内視鏡以外では、苦痛の少ない超音波検査も積極的に行います。

 治療の柱となるのは薬物療法です。近年は副作用の少ない薬や、従来の薬では改善しにくかった難治性の患者さんにも効果が期待できる新薬などが続々と登場し、薬物療法が大きく進化しています。安全で長く使える「5-ASA製剤」を基本に、「ステロイド薬」や「免疫調節薬」、「生物学的製剤」や「JAK阻害薬」など、働き方も強さもいろいろな治療薬を患者さん一人ひとりの症状に合わせて使い続けていきます。また、5-ASA製剤やステロイド薬による効果が十分に認められない場合などに、血液中の白血球を吸着除去することで過剰な免疫反応を抑制する「血球成分除去療法(GCAP)」も検討されます。

 IBDを発症した人が普通の生活を送るために必要なのは、正しい知識で治療に臨むことです。信頼できる医師と共に二人三脚でIBDに立ち向かっていってほしいと思います。

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