2022/07/20

初期では自覚症状が無く、静かに進行する緑内障






大橋眼科
藤谷 顕雄 副院長
●2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医。
大橋眼科 北海道札幌市白石区本通6丁目北1-1
https://www.ohashi-eye.jp/




失明原因のトップ緑内障

 緑内障とは、徐々に目の奥にある視神経が傷むことで、視野が欠けて見えない部分ができていく病気です。40歳以上の20人に1人が緑内障と推定されています。症状は数十年かけてゆっくりと進行することが多く、症状を自覚しづらいのが特徴で、日本人の中途失明原因の第一位となっています。

 緑内障にはいくつか種類がありますが、基本的に眼圧が高くなることで視神経が傷みやすくなります。眼圧とは眼球というボールの張り具合で、目の中を満たす房水と呼ばれる液体によって決まります。房水は目の中で循環し、隅角という角膜(黒目)と虹彩(茶目)の間を通り、大半は線維柱帯というフィルターを通って出ていきます。この房水の流れが悪くなると眼圧が高くなるのですが、線維柱帯が徐々に目詰まりするなどして眼圧が上がる「開放隅角緑内障」や、遠視や加齢、白内障などの影響で隅角が狭くなって眼圧が上がる「閉塞隅角緑内障」などに分けられます。

 視神経がどれくらいの眼圧に耐えられるかは個人差が大きく、日本人で一番多いのは「正常眼圧緑内障」です。正常眼圧緑内障は開放隅角緑内障の一種で、眼圧が正常範囲にもかかわらず視神経の障害が進行します。 

 

眼圧を下げて視野進行を防ぐ

 

 視神経は障害を受けると二度と元に戻りませんが、眼圧を下げることで視野障害の進行を抑えることができます。

 緑内障のタイプによって治療法は異なりますが、多くの例では点眼薬が第一選択となります。まず一種類の点眼薬で治療を始めますが、眼圧が十分に下がらない、視野障害が進行するなど治療効果が不十分であれば、点眼薬を変えたり追加します。近年、何種類かの薬効を持った成分を一つの点眼薬にまとめた配合剤が登場しており、点眼回数の減少や薬剤管理が容易になるなど、患者さんにとって治療の継続、症状のコントロールがしやすくなってきています。点眼薬では治療効果が不十分であったり、副作用で点眼継続が困難な場合などにはレーザー治療や手術が検討されます。レーザー治療や手術の目的も眼圧を下げることであり、これらの治療をしても緑内障は改善しません。

 緑内障は治療をしても少しずつ進行する慢性疾患です。視機能を守っていくには、生涯にわたって通院・治療が必要であることを理解する必要があります。

 

定期的な検診で早期発見を

 

 緑内障を早期に発見し、適切な治療を受ければ、多くの場合失明にいたることはありません。最も重要なのは、自覚症状が無くても定期的に検査を行うことです。眼科での眼圧検査では正常値かどうかを確認できますが、これだけでは正常眼圧緑内障を否定できません。眼底検査などをして、必要であれば視野検査を行います。近年、眼底の神経線維の厚みを測るOCT(光干渉断層計)検査が普及し、緑内障を早期に発見できるようになってきました。定期的にOCT検査を受けることで、視神経障害の進行するスピードをつかみ、治療変更するか、様子を見ても大丈夫かを判断するデータにも活用できます。

 緑内障など視野・視力に大きなダメージを与える眼疾患の多くは、加齢と共に発症のリスクが大きく上昇します。40歳を超えたら自覚症状がなくても年に一度は眼科検診を受けることをお勧めします。

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