2022/06/18

運動不足,ストレスは痛風,高尿酸血症の大敵(2022.6.18記)




佐野内科医院
佐野 公昭 院長
●1984年岩手医科大学卒業。89年北海道大学大学院修了。日本内科学会認定総合内科専門医。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士
佐野内科医院 札幌市中央区南5条西15丁目1-6
http://www.sanonaika-clinic.com




コロナ禍で患者増,痛風と高尿酸血症(2022.6.18記)


 「風が吹いても痛い」ほどの激痛が足の親指の付け根などを襲うことからその名前がつけられた「痛風」。患者数は増加を続けていて国内で110万人を超えると推定されています。コロナ禍の在宅勤務や外出自粛で運動不足になったり、食生活が乱れたりすることが原因となり、痛風や痛風につながる「高尿酸血症」の患者数が2~3割増加しているとの調査結果も報告されています。

 血液中の尿酸の値は健康診断などで知ることができます。1デシリットルあたりの血清尿酸値が7ミリグラムを越えると高尿酸血症といいます。

 血液中の尿酸値が高い状態が続くと関節などに尿酸がたまり、結晶化します。結晶が関節の中ではがれ落ちた時、白血球が結晶を異物と認識して攻撃し炎症を生じます。このとき関節の痛みや腫れ、発赤、熱感などの症状を起こします。これが痛風の発作です。多くは足の親指の付け根で起こりますが、膝や肘、かかと、手の関節に現れることもあります。痛風は男女差があり、中年以降の男性に圧倒的に多い病気ですが、近年は閉経後の女性の発症も増えています。

 尿酸が高い状態のまま放置していると、痛風になるだけではなく、慢性腎臓病、高血圧症、冠動脈疾患、脳卒中、心房細動、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝炎、糖尿病などのリスクも高くなります。尿への排泄も多くなるため尿路結石になる頻度も高くなります。

 肥満症やメタボリックシンドローム、高血圧症などの基礎疾患があるとそれだけでも尿酸値が高くなり、糖尿病や高脂血症など他の生活習慣病を複合的に合併するリスクも高くなります。ガイドラインではこうした基礎疾患のある方や自覚症状がなくても長年尿酸値高値を指摘されている場合も治療を勧めています。

 

病気の治療・予防のコツ,生活習慣の見直しが重要

 

 痛風の治療は、発作を起こして痛みのある間は痛みを抑える消炎鎮痛剤などにより、痛みと炎症を抑えます。痛みが落ち着いてから発作の原因となる尿酸値を下げる治療を始めます。急に尿酸値を下げると発作が起きることがありますので少しずつ下げるようにします。血液の尿酸値が下がっても関節の中の尿酸や結晶はなかなかなくならないので低めの尿酸値(1デシリットルあたり6ミリグラム以下が目標)を長期間維持するようにします。

 尿酸値を下げるために大切なのは生活習慣の見直しです。肥満、アルコールの飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足、ストレスは痛風、高尿酸血症の大敵です。プリン体の多い食品やアルコールは控えるようにしましょう。果糖やキシリトールも尿酸値を上昇させますので控えるようにしてください。それとは逆にコーヒー、チェリー、ビタミンC、低脂肪の乳製品は痛風リスクを低減すると報告されています。

 薬も最近種類が増えました。体内で尿酸が作られるのを抑える薬と、体内から尿への尿酸の排泄を促進する薬があります。患者さんの病態にあわせて薬を選択し少しずつ尿酸値を下げていき、目標を維持します。内服を中断すると再発したりしますので自己判断でやめたりせず治療は長く続けてください。

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