2021/07/20

ぜんそく、COPDと新型コロナウイルス感染症(2021.7.20記)

大道内科・呼吸器科クリニック 北田 順也 副院長 


医療法人社団 大空会
大道内科・呼吸器科クリニック
北田 順也 副院長
●日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医
大道内科・呼吸器科クリニック
 札幌市中央区北3条西4丁目 日本生命札幌ビル3階
https://www.ohmichi.or.jp/






ぜんそく、COPDと新型コロナウイルス感染症

 新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナ)がいまだ大きな脅威となっていますが、流行が始まって1年以上が経ち、これまでに多くのことが分かってきています。基礎疾患があると重症化しやすいとされていますが、ぜんそくの患者さんは一般の人と比較して「新型コロナに感染しにくい」、「重症化リスク、死亡リスクは変わらない」という結果が出ています。

 一方で、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんは「重症となるリスクが高い」ことが分かっています。新型コロナと、ぜんそくやCOPDとの関係を理解し、新型コロナの予防のほか、疾患に対する定期的な治療による症状の良好なコントロールがなによりも大切です。

 

ぜんそくの患者さんは新型コロナにかかりにくい?

 

 ぜんそくの患者さんは新型コロナにかかりにくいというのは本当でしょうか?ぜんそく患者を含む研究を複数まとめて解析するメタ解析という手法を用いたある研究では、ぜんそく患者さんは一般人口と比較して「新型コロナに感染しにくい」「新型コロナによる入院が少ない」という結果が示されています。一方でCOPDの患者さんでは感染しやすく、さらに重症化する人の割合が高いことが示されました。日本呼吸器学会の調査では、新型コロナ感染によるCOPD患者さんの死亡率は13.0%と全体の死亡率5.6%(2021.1.20記)より明らかに高い数字を示しています。

 この原因についてはすべてが明らかになっているわけではありませんが、ぜんそくを引き起こすアレルギーにかかわる物質やぜんそくの治療に用いる吸入ステロイド薬が、新型コロナウイルスが体内に侵入する入口(ACE2受容体)を減少させる作用があるために感染しにくくなっているという可能性が指摘されています。逆にACE2受容体は年齢に伴い増加し、男性や喫煙者に多く存在するため、高齢者やCOPDの患者さんは新型コロナにかかりやすく、重症化しやすいのかもしれません。

 

この結果を見てぜんそく患者さんは安心しても良いのでしょうか?

 

 一部の研究ではぜんそくのコントロールが良くない重症の患者さんが新型コロナに感染してしまった場合には、呼吸状態が悪化しやすく人工呼吸器を使用するリスクが高くなる、そしてそれを使用する期間が長くなる可能性が指摘されています。ぜんそく患者さんが新型コロナに感染しないというわけではありませんので、引き続き感染対策を徹底するようにしましょう。そしてきちんと定期通院治療をして良好な状態を維持することがなによりも大切です。

 

新型コロナワクチン、打っても大丈夫?

 

 医療従事者につづいて65歳以上の高齢者からワクチンの接種が開始されていましたが、徐々に64歳以下の基礎疾患を有する方への「優先接種」に移行していっています。厚労省が示す14項目のいずれかに当てはまる基礎疾患を持ち、入院か通院をしている人、もしくはBMI30以上という基準を満たした肥満の人が優先接種の対象です。この項目には「慢性の呼吸器の病気」が入っています。特定の病名が出ていないので幅広い解釈ができますが、ぜんそく、COPDは含まれると考えるのが一般的です。

 患者さんに「新型コロナワクチンを接種すべきかどうか」について聞かれますが、現在用いられているワクチンは性別や年齢に関係なく軒並み90%以上と極めて高い予防効果を持ち、たとえ感染しても重症化しにくく、周囲にも感染を拡げにくくなるという効果が期待できます。

 強いアレルギー反応を示すアナフィラキシーを心配する方もおられますが、「ぜんそくの人は新型コロナワクチン接種によるアレルギー反応が起こりやすい」という事実はなく、過度の心配は必要ありませんので、かかりつけ医とも相談の上、ぜひ接種をご検討ください。

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