2020/05/21

網膜の病気、加齢黄斑変性

大橋眼科 藤谷 顕雄 副院長



大橋眼科

藤谷 顕雄 副院長
●2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医
大橋眼科 札幌市白石区本通6丁目北1-1
https://www.ohashi-eye.jp/





網膜の病気、加齢黄斑変性

 目をカメラに例えると、目の中にはカメラのフィルムに相当する網膜という薄い膜状の組織があり、そこで受けた映像の情報が脳へ伝えられます。この網膜の中心部を「黄斑」と呼びます。黄斑はものを見る中心となる部分であり、視力は黄斑の状態に大きく左右されます。この黄斑が加齢とともに病的な状態になり、ものがゆがんで見える、ぼやけて見える、見たいところが暗くなるといった症状とともに、視力低下をきたすのが加齢黄斑変性という病気です。原因は完全には解明されていませんが、老化現象が主因と考えられており、そのほか、喫煙、遺伝、紫外線なども病気に関与することが分かっています。

 日本では成人の中途失明原因で緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症に次ぐ第4位の疾患です。近年増加傾向にあり、患者数は70万人超にのぼり、50歳以上の人では約60〜100人に1人にみられると推定されています。

 

 

「滲出型」と「萎縮型」

 

 加齢黄斑変性には「滲出型」と「萎縮型」の2つのタイプがあります。滲出型は、網膜の外側にある「脈絡膜」に異常な血管(新生血管)が発生して網膜側に伸びてくるタイプです。新生血管は非常にもろいため、血液や水分が滲出して黄斑が機能障害を起こし、発症します。日本人の加齢黄斑変性の多くがこのタイプです。

一方、萎縮型は加齢とともに黄斑の組織が徐々に萎縮していくタイプで、日本人に少なく欧米人の発症が多いです。進行は緩やかですが、有効な治療法はまだ確立されていません。

 

 

光線力学療法と抗VEGF療法

 

 病気の進行度や重症度、病型によって治療法はいくつかあります。

 近年、治療の主流になっているのが「抗VEGF療法」という、新生血管の増殖や成長を抑える薬を、眼球の硝子体内に注射する方法です。導入期では、月1回の注射を3カ月間繰り返します。その後の維持期は、定期的に検査を行い、必要に応じて注射をします。

 他にも「光線力学療法(PDT)」があります。新生血管に集まる特殊な薬剤を注射し、そこに専用のレーザー光線を当てることにより、新生血管を閉塞させる方法です。単独治療での治療成績は、抗VEGF療法に劣りますが、病態に応じて抗VEGF療法に併用することがあります。

 

 

セルフチェックと定期的な検診を

 

 加齢黄斑変性は早期発見、早期治療が何より大事です。早期に発見し、適切な時期に治療を受けないと、進行してからでは視力の回復・改善が難しくなります。片方の目に見づらい、見えない部分があっても、両目で見ているともう片方の目でカバーしてしまうため、見えない部分がかなり広がるまで症状に気付かないことも多いです。

 ものがゆがんで見えていないかをセルフチェックするときに使われるのが「アムスラーチャート」と呼ばれる格子状の表です。カレンダーや将棋盤など格子状のものでも代用できます。片目ずつで見て、中心がゆがんで見えたり、線がぼやけて薄暗いところがあったり、部分的に欠けて見えたりしたら、すぐに眼科を受診してください。また、視覚障害の有病率が50歳代で増加することを考えれば、40歳を過ぎたら自覚症状がなくても定期的に眼科で検診を受けることをお勧めします。

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