2020/06/17

回復期リハビリテーション

医療法人 喬成会 花川病院 菅沼宏之 院長 




医療法人 喬成会 花川病院

菅沼宏之 院長
●北海道大学卒。日本リハビリテーション医学会指導医、認定臨床医、リハビリテーション科専門医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士
花川病院 石狩市花川南7条5丁目2
http://kyouseikai.jp/hanakawahp/





「回復期リハビリテーション」について教えてください。

 病気で倒れたり事故に遭ったりした直後は「急性期」といいます。ここで手術など必要な処置をし、容体が落ち着いたら、ここから最長6カ月の「回復期」に入ります。ここで治療後に低下した能力を回復するため、さまざまな専門職が共同して集中的なリハビリを実施するのが、回復期リハビリテーションです。

 かつては「手術後は安静第一」と考えられていましたが、世界的に研究が進む中で「手術直後でも起き上がって動いた方が回復は早い」ということが分かりました。在宅復帰を進めるには、回復期リハビリを少しでも早く集中的に行うことが非常に重要です。

 

リハビリはどのように進めますか


 回復期リハビリは、主に脳卒中や頭部外傷、交通事故による複雑骨折の患者さん、外科手術などの治療の安静により生じた廃用症候群を有する患者さんなどが対象になります。脳卒中は5〜6カ月間、骨折は2〜3カ月間など、疾患に応じて入院できる上限が決まっており、最大1日9単位(1単位20分、最大3時間)まで保険診療で認められています。

 座る、立つ、歩くといった基本動作の訓練から始め、食事や入浴、着替え、排泄など日常生活に必要な動作が自分でできるような訓練へと進めていきます。自宅・社会復帰を目的としますが、家庭環境や仕事内容など条件は人それぞれですので、患者さんの病状や要望、生活背景などに応じて個別に目標が設定され、一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立てます。

 回復期リハビリには、医師を中心に多職種が密接に連携するチーム医療が不可欠です。施設の体制により異なりますが、医師、看護師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、医療ソーシャルワーカーらが連携して一つのチームとなり、入院中のリハビリだけでなく、退院した後も快適な暮らしができるようサポートしていきます。

 

ロボットによるリハビリが注目されていますが。

 

 近年、リハビリを支援するロボットが次々に登場して効率的なリハビリに貢献しています。例えば、トヨタ自動車と藤田医科大学(愛知県豊明市)とが共同開発した「下肢麻痺(まひ)リハビリ支援ロボット」。脳卒中で麻痺した脚にロボット脚を装着し、本体の可動式床の上を歩行練習するもので、転倒することなく、運動機能の回復を効率的に図れるのが特長です。患者さんの障害の程度に応じ、より長時間・多数歩の練習支援が可能になり、従来の歩行リハビリと比べ、回復速度の向上や歩行機能の改善が報告されています。

 人と人との触れ合いが重要視されるリハビリの現場で、すべての手技 ・ 施術をロボットに置き換えることはできませんが、人の足りない部分を補った上で、より安全性 ・ 効率性の高いリハビリを実現できるようなロボットの開発 ・ 登場が期待されます。

 

施設選びのポイントについて教えてください。

 

 リハビリは量と質の両面を充実させることが非常に重要です。まず量の面ですが、セラピスト(PT、OT、ST)の数が多く、患者さん1人あたりに十分なリハビリを提供できているか。また、リハビリは切れ目なく、継続して行うことが大切なので、休日も休まずリハビリが提供されているかがポイントです。次に質に関してですが、チーム医療が徹底されていることが第一。すべての職種が相互に他領域への理解を深めることで、全スタッフが患者さんの全体像を描けるようになるからです。リハビリの専門医が勤務していること、PT、OT、STがバランスよく配置されていることもポイントになります。

 ホームページや資料・パンフレットなどで、施設の特長や提供するリハビリの内容、理念や方針を比較してみるのもいいでしょう。気になる施設がある場合、一度リハビリの様子などを見学してみるのも一つの方法です。

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