医療法人 喬成会
花川病院
菅沼 宏之 院長
●北海道大学卒。日本リハビリテーション医学会指導医、認定臨床医、リハビリテーション科専門医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。
●花川病院 石狩市花川南7条5丁目2番地
http://kyouseikai.jp/hanakawahp/
ウィズコロナ時代のリハビリ診療(2021.11.20記)
道内の新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、ワクチンの接種も進み、減少の兆しがみえ始めています。ただ、もちろんまだ油断はできません。多くの病院では、コロナ禍、そしてウィズコロナ時代に対応するため、院内感染の防止対策を徹底しながら診療を行なっています。リハビリの現場では患者さんとセラピストの接触が多く、また介助が必要な患者さんではさらに密接に接触する機会が増えます。このため、リハビリにおいては特に感染対策を強化して治療・ケアにあたっています。患者さんとリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)相互の体温測定・マスク着用・手指消毒の徹底、セラピストのゴーグルやフェイスシールドの使用、リハビリ室の人数制限と換気など、可能な限りの感染防護体制を整え、患者さんたちが安心してリハビリに取り組んでもらえるよう不断の努力を続けています。
重要性が増す回復期リハビリ
回復期リハビリの対象となるのは、主に脳卒中や頭部外傷、交通事故による複雑骨折、外科手術などの治療の安静により生じた廃用症候群を有する患者さんなどです。脳卒中は5〜6カ月間、骨折は2〜3カ月間など、疾患に応じて入院できる上限が決まっており、最大1日9単位(1単位20分、最大3時間)まで保険診療が認められています。
以前は「手術後は安静第一」と考えられていましたが、世界的に研究が進む中で「手術直後でも起き上がって動いた方が回復は早い」ということが明らかになっています。在宅復帰に効果を上げるためには、回復期リハビリを少しでも早く集中的に行うことが非常に重要です。
患者さんの病状や要望、生活背景などに応じて個別に目標が設定され、一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立てます。医師を中心に他職種が密接に連携するチームアプローチが不可欠です。医師、看護師、リハビリ専門職、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーらが連携して一つのチームとなり、入院中のリハビリだけでなく、退院した後も快適な暮らしができるようサポートすることが大切です。
日々進歩を続けるリハビリ医療の未来
近年、リハビリ分野は飛躍的な進歩を遂げ、新しい治療法が数多く開発されています。例えば、脳卒中などの後遺症による手の麻痺(まひ)に対する治療。以前は、麻痺のない手の訓練を集中的に行い、早期に日常生活動作の向上を図ることが主流でしたが、現在ではまひのある手を積極的に動かすことが脳を刺激し、後遺症の改善につながることが分かっています。リハビリによりその患者さんに残された機能を強化するだけでなく、障害のある部位・領域にはよりますが失われた機能の回復・改善も期待できるようになってきました。
支援ロボットを用いるリハビリも新しい治療法の一つです。すべての患者さんに有効というわけではありませんが、従来のリハビリと比べ、より安全性・効率性の高い治療・ケアが可能となり、回復速度の向上や機能改善につながっています。
医療現場は日進月歩です。今はまだ「不治の後遺症」も近い将来に「治りうる症状」となる日がやってくるはずです。私たちリハビリ医療関係者も日々学び、進化し続けることを望んでいます。