2020/03/19

気管支喘息(ぜんそく)

大道内科・呼吸器科クリニック 北田 順也 副院長



医療法人社団 大空会
大道内科・呼吸器科クリニック
北田 順也 副院長
●日本呼吸器学会認定呼吸器専門医、日本呼吸器内視鏡学会認定気管支鏡専門医
大道内科・呼吸器科クリニック 札幌市中央区北3条西4丁目 日本生命札幌ビル3階
https://www.ohmichi.or.jp/




増え続ける気管支喘息(ぜんそく)

 近年のアレルギー疾患の増加に示されるように、日本における気管支喘息患者数は推定では約800万人、厚生労働省の調査でも約450万人と年々増加しています。

 ガイドラインに準じた吸入ステロイド薬を中心とした治療の普及によって、気管支喘息をコントロール良好な状態に維持することが可能になってきたため、年間死亡者数は低下傾向にありますが、患者さんの中の5〜10%は重症喘息・難治性喘息であるといわれています。咳や呼吸困難のため生活の質(QOL)が低下している状態を強いられている方が、一定数いるという現状があります。



気管支喘息のタイプ分類(フェノタイプ)


 ここ数年、気管支喘息の病態解明と治療薬の進歩は目覚ましいものがあります。一口に気管支喘息といっても単一の病気ではなく、症状や経過は多彩であることから病態に対してのタイプ分類が行われています。以前より若い人におこる「アトピー型」、成人してから発症する「好酸球優位型」といった明らかに特徴の異なる喘息の病気のタイプや、「アスピリン喘息」「運動誘発性喘息」などの特殊なタイプが知られていました。

 こういったタイプ分類は「フェノタイプ」と呼ばれており、遺伝的素因と環境要因によってつくられた臨床像に基づいて分類を行うことにより、それぞれのタイプに対して最適な薬物治療を選択することができるようになってきました。

 近年では、臨床症状、発症年齢、経過、性別、重症度、呼吸機能、画像検査、治療反応性などの指標のほか、末梢血好酸球値、血清IgE値や血清ペリオスチン値、血清IL—4/IL—5/IL—13などの血液中の物質、呼気NO値など、さまざまな検査結果も含めた解析を行うことにより、新たな、より細分化したフェノタイプも提唱されています。

 

重症・難治性ぜんそくと生物学的製剤


 高容量の吸入ステロイド薬に加えて、そのほかの長期管理薬、または全身性ステロイド薬を必要としたり、そうした治療にもかかわらずコントロール不良の状態であったりする方は、重症喘息あるいは難治性喘息と呼ばれています。

 重症喘息や難治性喘息に対しては、昨今、新たな喘息治療薬が続々と登場しています。特に、抗IgE抗体、抗IL—5抗体、抗IL—5受容体α抗体、抗IL—4/IL—13受容体抗体といった生物学的製剤の登場が注目されています。

 生物学的製剤は、薬価が高額であることによる患者さんへの経済的負担や、長期使用による安全性の検討など、いくつかの課題が残されてはいますが、重症喘息や難治性喘息の患者さんにとって、重要な治療選択肢の一つとなり得ます。

 現在の治療で喘息のコントロールが得られず、症状や発作に悩まされている方は、一度お近くの「日本呼吸器学会認定呼吸器専門医」にご相談いただければ、新しい治療内容を提案できるかもしれません。お一人で辛い症状にお悩みにならずに、気軽に受診していただければと思います。

人気の投稿

このブログを検索