医療法人 喬成会
花川病院
菅沼 宏之 院長
●北海道大学卒。日本リハビリテーション医学会指導医、認定臨床医、リハビリテーション科専門医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。
●花川病院 石狩市花川南7条5丁目2番地
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急性期と回復期、維持期のリハビリ
多くの方は「リハビリテーション(以下リハビリと略します)」という言葉はご存知でも、急性期や回復期、維持期のリハビリとは何か、まだあまり知られていないと思います。
リハビリ医療は、患者さんの回復の経過によって3段階に分けることができます。治療後すぐの「急性期」、生命の危機を脱した「回復期」、退院してからの「維持期」です。リハビリは段階によって適した訓練をすることで最大限の効果が得られます。
急性期のリハビリは発症直後から開始され、生命の危機を脱して全身状態が安定するまで行われます。過度の安静を続けると脳卒中が治療できても、手足の関節拘縮(こうしゅく)や筋力低下などで寝たきり状態になる危険があるためです。 回復期のリハビリは、全身状態が安定した2、3週間後から6カ月ごろまで、リハビリ専門病院に転院、もしくは回復期病棟に移って行われます。急性期を過ぎて後遺症が残った場合に、それぞれの障害に対して集中的なリハビリを行います。後遺症が残存した人には最も回復が期待できる時期でもあります。
維持期のリハビリは後遺症がある程度まで回復した段階で、在宅療養か施設に入所して行われます。在宅療養、施設入所のいずれも主に介護保険を利用し、継続したリハビリが行われます。
重要性が増す回復期リハビリ
脳卒中や転倒による骨折は、高齢者が寝たきりになる主な原因です。回復期リハビリは、これらの病気やケガの発症直後から、日常生活に復帰することを目指して行われます。以前は「手術後は安静第一」と考えられていましたが、世界的に研究が進む中で「手術直後でも起き上がって動いた方が回復は早い」ということが明らかになっています。在宅復帰に効果を上げるためには、回復期リハビリを少しでも早く集中的に行うことが非常に重要です。
患者さんの病状や要望、生活背景などに応じて個別に目標が設定され、一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立てます。医師を中心に他職種が密接に連携するチームアプローチが不可欠です。医師、看護師、リハビリ専門職、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーらが連携して一つのチームとなり、在宅生活というゴールに向けて患者さん、ご家族とともに前身していきます。入院から在宅まで切れ目なくリハビリを提供する「シームレスリハビリテーション」が大切です。
日々進歩を続けるリハビリ医療の未来
近年、リハビリ分野は飛躍的な進歩を遂げ、新しい治療法が数多く開発されています。リハビリによりその患者さんに残された機能を強化するだけでなく、障害のある部位・領域にはよりますが失われた機能の回復・改善も期待できるようになってきました。支援ロボットを用いるリハビリも新しい治療法の一つです。すべての患者さんに有効というわけではありませんが、従来のリハビリと比べ、より安全性・効率性の高い治療・ケアが可能となり、回復速度の向上や機能改善につながっています。
医療現場は日進月歩です。今はまだ「不治の後遺症」も近い将来に「治りうる症状」となる日がやってくるはずです。私たちリハビリ医療関係者も日々学び、進化し続けることを望んでいます。