医療法人社団
アスクトース 石丸歯科
近藤 誉一郎 院長
●1990年鶴見大学歯学部卒業。同大学第II補綴学講座研修後、東芝病院歯科口腔外科医員、同病院歯科口腔外科医長などを経て、2011年より現職。医学博士(東京医科大学)
●医療法人社団 アスクトース 石丸歯科
札幌市中央区南1条東2丁目南1条 タカハタビル6F
https://www.ishimaru-dc.com/
長引くコロナ禍で歯ぎしりが増加傾向
朝起きると歯や顎(あご)が痛く、口の周囲がこわばっている。歯が欠けたり割れたりする。詰め物がよく外れる。──といった症状はありませんか? それは、歯ぎしりが原因かもしれません。
歯ぎしりには、寝ている時に、無意識のうちに歯をかみ締めたり、擦り合わせたりする「睡眠時プラキシズム」と、日中の起きている時間帯にも無意識に歯を食いしばったりかみ締めたりする「覚醒時プラキシズム」があります。
遺伝や睡眠の質の低下、薬の副作用、アルコールやカフェイン、喫煙の影響など、要因はいくつか考えられますが、明確には分かっていません。仕事や日常生活で過度のストレスを抱え込むことも関わっていると考えられています。コロナ禍が長引き、人との付き合いやレジャー・旅行・スポーツなどの趣味が制限される生活が続いてストレスが溜まっている方も多いようで、そのことが原因とみられる歯ぎしりの発症や悪化が目立ちます。
歯ぎしりは危険サイン歯周病悪化など招く恐れ
歯ぎしりをしている頻度を調べた調査(歯ぎしり音を自覚しているケース)によると、小児は10〜20%、成人では5〜8%、高齢者は2〜3%に歯ぎしりが発生しています。年をとるとともに徐々に減っていく傾向にあり、男女間で大きな差はないとされています。
睡眠時の歯ぎしりは、覚醒時の歯ぎしりよりも強いといわれており、歯牙や歯周組織、顎の筋肉や関節に大きな負担がかかります。自覚症状がない人も多いですが、歯ぎしりを放置していると、歯の表面がすり減ったり、歯の根元が欠けたり、歯や顎、頭に痛みを感じたり、顎関節症の原因になったりすることがあります。また、歯周病が悪化したりする人や、歯の被せ物や健全な歯をも破損する人もいます。歯ぎしりは健康を脅かす危険なサインの一つとしてとらえ、早めに対処することが大切です。
保険適用の簡単な検査で正確な診断が可能
歯ぎしりの自覚や歯のすり減り具合、同居家族からの指摘、起床時の歯や顎の痛みなどの症状から歯ぎしりを診断することも可能ですが、睡眠時の歯ぎしりはそれだけでは正確性にやや欠ける場合もありました。
近年、睡眠中の顎の筋肉の筋電図を記録・解析し、その結果により歯ぎしりの有無や程度を診断する検査が登場し、2020年4月から公的医療保険が認められています。自宅に「携帯型筋電計」という装置を持って帰ってもらい、就寝時に装着するだけの簡単な検査ですが、客観的なデータに基づいた正確な診断ができるようになりました。
マウスピースで摩耗抑える生活、睡眠習慣改善も重要
治療は、歯科医院でプラスチック製のマウスピースを作り、睡眠時に装着してもらうのが一般的です。歯にかかる圧力を和げ摩耗を抑えます。不安的な睡眠が歯ぎしりを誘発しているケースも多いので、睡眠衛生や生活習慣改善の指導を行います。また、ストレスの要因を見極め、自分なりのストレス対処方法を身に付けられるようアドバイスもします。日中の歯ぎしりに対しては、無意識の食いしばりなどの癖を改める訓練や指導で治療していきます。
歯ぎしりによる歯の破損は意外に多く、歯ぎしりの強さによっては歯を失う原因にもなりえます。家族など周囲の人に頻繁に指摘されたり、顎の周囲にだるさを感じたりしているなら要注意です。一度かかりつけ歯科医に相談してください。