2021/12/20

白内障の治療

大橋眼科 藤谷 顕雄 副院長




大橋眼科
藤谷 顕雄 副院長
●2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医。
大橋眼科 北海道札幌市白石区本通6丁目北1-1
https://www.ohashi-eye.jp/




加齢で発症、水晶体が濁り視力低下

 白内障は、眼の中でカメラのレンズのような役割をしている「水晶体」が濁ってしまう病気です。主な自覚症状としては、視力が低下する、かすんで見える、まぶしくて見えづらい、近視が進行するなどがあります。白内障の原因の多くは加齢で、早い人では40歳代から始まります。年齢が上がるにつれて増加し、80歳以上ではほぼ100%が発症するとされます。他にも外傷や糖尿病、ステロイドの使用が原因になることもあります。

 治療には点眼薬もありますが、少し進行を遅らせる程度の効果しかありません。そのため、最終的には手術が必要になります。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の水晶体を超音波で細くして取り除き、代わりに人工の「眼内レンズ」を挿入するものです。手術の技術向上や医療機器の進歩によって短時間で正確にできるようになり、患者さんの体への負担は少なくなっています。日帰り手術を行っている施設も多くあります。白内障手術は全国で年間140万件以上行われており、最も実施件数の多い手術です。

 

“単焦点”と“多焦点”種類ごとに一長一短

 

 挿入する眼内レンズは、大きく分けて単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあり、それぞれ一長一短があります。

 単焦点眼内レンズは〈遠く〉〈中間〉〈近く〉など、どこか一つの距離にピントが合い、そこから外れるとぼやけて見えます。ピントを合わせたい距離をあらかじめ決めて手術を行い、それ以外の距離ではメガネでピントを調節します。一方、多焦点眼内レンズは遠くと近くの2つで焦点が合います。近年は遠く、中間、近くの3カ所に焦点が合うレンズも登場しています。自由にピントを変えられるような見え方とは異なりますが、遠くにも近くにも(3焦点眼内レンズであれば中間距離も)メガネなしで焦点が合いやすくなります。手元を見るときは老眼鏡が必要な場合もありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。ただし、多焦点眼内レンズに共通することですが、構造上、レンズに入ってくる光を複数の焦点に振り分けるため、色の鮮やかさやくっきり感など解像度は落ちます。また、夜間に街灯や車のライトがぼやけたり、まぶしく感じるハロー、グレアと呼ばれる現象が起こりやすくなります。

 見え方だけでなく、費用面でも違いがあります。単焦点眼内レンズは公的医療保険の対象ですが、多焦点眼内レンズにかかる費用は公的医療保険の対象外で自己負担となります。

 

眼科医とよく相談し、最も合うレンズを選んで

 

 細かい作業をする方や夜間に車の運転をする方などは単焦点眼内レンズの方が向いているといえます。また、メガネをなるべく掛けたくない人やスポーツなどアウトドアでの活動を好まれる方は多焦点眼内レンズの方が向いているでしょう。

 ただし、他の病気で視機能が低下している方は多焦点眼内レンズの方が見えづらく感じますし、比較的まれではありますが他の病気がなくても多焦点眼内レンズの見え方に慣れることができない方もいます。

 患者さんはそれぞれの眼内レンズの特徴をよく理解した上で、かかりつけ眼科医とじっくり相談しながら比較、検討し、ご自身のライフスタイルに最も合う眼内レンズを選ぶことが大切です。

 加齢に伴って起こりやすい目の病気は、白内障のほかにも緑内障や加齢黄斑変性などたくさんあります。40歳を過ぎたら特別な症状がなくても、定期的に眼科で検診を受けるよう心掛けてください。

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