2021/09/20

胃がん検診と胃がんのリスク判定(2021.9.20記)

佐野内科医院 佐野 公昭 院長




佐野内科医院

佐野 公昭 院長
●1984年岩手医科大学卒業。北大大学院修了。日本内科学会認定総合内科専門医。日本消化器病学会認定消化器病専門医。日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医。医学博士
佐野内科医院 札幌市中央区南5条西15丁目1-6

http://www.sano-naika-clinic.com/





コロナでがん検診が低迷病状進行リスクが膨らむ(2021.9.20記)

 9月は、がん検診受診率向上などがんの早期発見・治療の重要性を広く伝えるための啓発活動が行われる「がん制圧月間」です。がん検診の目的は、がんを早期発見・治療することにより死亡率を低下させることです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、例年に比べ、がん検診を受診する方が大きく減っています。発見・診断が遅れれば、病気が進行してしまう恐れがあります。

 コロナの流行によって、がんが減るわけではありません。早期発見のチャンスを逃さないように、しっかりとがん検診を受けてほしいです。また、検診で「精密検査が必要」とされた方はそのまま放置せずにできるだけ早く受診してください。今回は、胃がん検診と胃がんのリスク判定について紹介します。

 

胃がん検診の検査方法内視鏡検査のメリット

 

 国のがん検診の指針が2016年に改定され、各市町村の胃がん検診が変わりました。札幌市では19年1月から検診内容、対象年齢、受診間隔が変更になりました。バリウム検査に加え、内視鏡検査が選べるようになり、対象年齢は40歳以上から50歳以上に、検査の間隔は「毎年」から「2年に1回」となりました。

 バリウム検査は費用が安く、検査時間が短いなど優れた検査法ですが、平坦な病変や食道の病変を見つけにくいという弱点があります。また、検査終了後にバリウムの排泄が辛いという方も少なくありません。異常が疑われる場合には、あらためて内視鏡検査が必要になることも弱点と言えるかもしれません。一方、内視鏡検査はバリウム検査に比べて喉の麻酔をするなど準備に時間がかかったりはしますが、食道の観察も行えますし胃の中の様子も形だけではなく色調の変化、粘液の付着なども含めて細かく観察できるのが利点です。また、内視鏡検査では、がんが疑われる病変があれば、その組織を一部採取して(生検)、がんかどうかの確定診断をつけることができます。治療までの時間を短くすることができ、がん検診の目的である「がんによる死亡率の低下」という点では内視鏡検査の方が有用であると考えられます。

 

将来における胃がんのできやすさを判定する検査

 

 胃がん検診の変更に伴い、胃がんになりやすいかどうか胃の健康度を判定する検査(胃がんのリスク判定)も新たに導入されました。ピロリ菌は胃がんの原因の80%であるとされており、ピロリ菌感染に起因する胃炎がある場合は、胃がんになりやすいと言われております。血液検査でピロリ菌感染の有無と、胃粘膜の萎縮の程度を示す物質の測定を組み合わせ、将来の胃がんのリスクを判定するものです。判定はA(ピロリ菌の感染がなく、胃粘膜の萎縮もない)・B(感染はあるが、萎縮はない)・C(感染があり、萎縮もある)・D(感染はないが、萎縮はある)の4群に分けます。リスクのあるB〜D群の方は、内視鏡などによる精密検査を受けることが望まれます。

 札幌市では19年1月から、満40歳の方を対象に一度だけこの検査を受けることができます(胃炎治療中など一部対象外あり)。対象となる方は、ぜひ制度を利用して受診し、胃がんのリスク低減や早期発見につなげていただきたいと思います。

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