2020/11/20

中途失明の原因の第2位、糖尿病網膜症

大橋眼科 藤谷 顕雄 副院長




大橋眼科
藤谷 顕雄 副院長
●2005年北海道大学医学部卒業。時計台記念病院、手稲渓仁会病院、北海道大学病院などを経て、2019年4月より現職。日本眼科学会認定眼科専門医士
大橋眼科 札幌市白石区本通6丁目北1-1

https://www.ohashi-eye.jp/





中途失明の原因の第2位、糖尿病網膜症

 糖尿病網膜症は腎症、神経障害と並ぶ糖尿病の3大合併症のうちの一つで、目の網膜の血管が傷む病気です。2019年現在、日本人の中途失明原因の2位を占めます。厚労省の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる成人の患者は16年時点で約1000万人と推計されています。

 

自覚症状がほとんどなく、3段階で進行

 

 糖尿病は、高血糖が続く病気です。そして、この高い血糖値が血管を傷めます。網膜には細い血管が張り巡らされており、高血糖が長期間持続すると網膜の血流障害が進み、さまざまな眼障害を引きおこします。糖尿病網膜症は大きく3つの段階に分けられます。

 「単純網膜症」といわれる初期では、網膜の血管が傷んで細い血管にこぶができたり、弱くなった血管壁から血液や血漿(けっしょう)成分が漏れたりしますが、この段階では血糖値管理を徹底すれば良くなる可能性があります。

 次の「前増殖網膜症」になると血管が閉塞し、白い綿のようにみえる軟性白斑が網膜にできることもあります。さらに進んで最終段階の「増殖網膜症」になると、網膜に弱くて出血しやすい新生血管ができて、硝子体出血や網膜剥離を起こしやすい状態となり、放置すれば失明のリスクも高くなります。

 この病気が厄介なのは、前増殖網膜症まで進行してもなかなか自覚症状が表れないところです。見えにくい、と目に異常を感じた時にはすでに増殖網膜症に進行してしまっている可能性が高く、治療しても完全に視力を取り戻すのが難しいケースも少なくありません。

 

第2段階以降の治療法

 

 前増殖・増殖糖尿病網膜症においては、血管の血漿成分が漏れ出てくる部位や、血管が閉塞して血液が通わずに酸素や栄養が供給されていない部位などに、レーザー光線を照射し網膜を焼く「網膜光凝固術」が多くの場合必要となります。この治療を行うと、網膜全体の栄養状態が改善し、新生血管の発生を抑え、病気の進行を抑えることができます。網膜光凝固術は外来で点眼麻酔をして行います。10分程度で治療は行えますが、複数回行う必要があります。

 新生血管から出血したり、網膜剥離を起こしたりしている場合は「硝子体手術」を行います。

 

黄斑部に糖尿病網膜症が起こると…

 

 糖尿病網膜症には、網膜の中心である黄斑に浮腫を合併するケース(糖尿病黄斑浮腫)もあります。初期から末期まであらゆる時期に起こる可能性がり、この場合は病状がそれほど進んでいなくても視力が落ちることがあります。

 糖尿病黄斑浮腫に対する治療としては近年、「抗VEGF薬」が保険診療として認められました。眼球に直接抗VEGF薬を投与するもので、患者さんの体への負担が少なく、黄斑浮腫を軽減し、ある程度視力を改善できるようになりました。 ただ、複数回の治療を要すことやまれではあるものの感染の危険性があること、保険適用であっても自己負担が比較的高額な治療であることに留意する必要があります。黄斑浮腫の治療には、ほかにステロイド剤投与、レーザー治療、硝子体手術も検討されます。

 

糖尿病と診断されたら、眼科の受診も

 

 まずは糖尿病にならないようにすることが大事ですが、健診などでもし糖尿病と診断されたら、ぜひ、眼科も受診するようにお願いします。糖尿病網膜症が原因の失明を防ぐとともに、可能な限り視力回復・改善を目指すには、早期発見・治療が原則。そのためにも、糖尿病と診断された時から定期的な眼底検査などのチェックが何よりも重要です。

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