2020/10/19

おしりや肛門付近の[痛み]は“痔のサイン”



藻友会 札幌いしやま病院

札幌いしやまクリニック

川村 麻衣子 医局長
●札幌医科大学医学部卒業。日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医。医学博士
札幌いしやま病院 札幌市中央区南15条西10丁目4-1
●札幌いしやまクリニック 札幌市中央区南15条西11丁目2-1
http://ishiyama.or.jp/





おしりや肛門付近の[痛み]は“痔のサイン”

 「排便時に痛みがある」「肛門が腫れて痛みを伴う」など、おしり、特に肛門周辺に痛みを感じた場合、さまざまなおしりのトラブルが考えられますが、最も頻度が高いのは「痔」です。

 痔は肛門周囲の病気の総称です。なかでも「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻」は、痔の患者さんの約8割を占める3大疾患です。男女を問わず圧倒的に多いのが痔核です。女性の場合、2番目に多いのが裂肛で、男性に多くみられるのが痔瘻です。

 

裂肛の主な原因は便秘

 

 排便前後におしりが痛くなったり、排便時に紙に少量の血がついたりという症状がある人は、裂肛の可能性があります。裂肛は、便の出口である肛門上皮にできた傷のことで、その原因で最も多いのは便秘です。硬い便を無理やり出そうとして強くいきんだ時に切れてしまうのです。裂肛になると、便意があってもまた痛い思いをするのが嫌で、つい排便を我慢してしまいがちになり、その結果ますます便秘になり、裂肛を悪化させるという悪循環に陥ります。慢性化すると、裂肛の傷が深くなる「肛門潰瘍」や肛門が狭くなる「肛門狭窄」を引き起こすなど、簡単には治らなくなるので注意が必要です。

 

激しく痛む血栓性外痔核と嵌頓(かんとん)痔核

 

 肛門の内側にできる内痔核では痛みを感じませんが、肛門の外側にできる外痔核には痛みを感じます。特に、肛門部の血行が悪くなり、突然肛門周囲に硬いしこり(血栓)ができることがあり、これを「血栓性外痔核」といいます。急に腫れて激しく痛み、時には皮膚が破れて出血することもあります。 また、肛門の外に飛び出した痔核内に血栓がたくさんできて腫れる「嵌頓痔核」という状態になる人もいます。こちらも突然の激しい痛みが特徴です。

 

おしりに膿(うみ)のトンネルができる痔瘻

 

 痔瘻は、おしりに膿のトンネルができて化膿を繰り返す病気です。手術でトンネルを取らない限り、何度も細菌感染を起こして痛みや腫れを繰り返します。

 痔瘻の前段階の「肛門周囲膿瘍(のうよう)」という状態でも肛門周囲が腫れて激しく痛み、発熱することもあります。

 

自己判断は禁物,我慢せず早めに受診を

 

 そのほか、おしりの痛みの原因としては、お風呂や温水洗浄便座での洗いすぎで炎症を起こし、それが引き金となって痛みや痒みが出るケースや、魚や鶏の骨などを誤飲し、それらの異物が腸や肛門などに刺さって化膿しているといった珍しい症例もあります。また、痛みや出血の背後に、直腸がんや肛門がんなど命にかかわるような怖い病気が隠れていることも考えられます。

 「多分、軽い痔だから大丈夫」などの自己判断は禁物です。たとえ痔であっても自然治癒しないケースも多いですし、市販の薬が効かなかったり合わなかったりする症例も少なくありません。おしりが痛い、おしりの調子が悪いと感じた時は、決してがまんせずに、気軽に肛門外科を受診し、早めに対処してほしいと思います。おしりの病気は、決して特別なことでも恥ずかしいことでもありませんが、女性医師による女性患者さんのみの診療日を設定している医療機関もありますので、調べてみるといいでしょう。

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