2019/10/18

痔とはどのような病気ですか?

    札幌いしやまクリニック  石山 元太郎 理事長
    医療法人 藻友会
    札幌いしやま病院札幌いしやまクリニック
    石山 元太郎 理事長
    ●日本外科学会認定外科専門医。日本大腸肛門病学会認定大腸肛門病専門医。
    ●札幌いしやま病院 札幌市中央区南15条西10丁目4-1
    ●札幌いしやまクリニック 札幌市中央区南15条西11丁目2-1





    痔とはどのような病気ですか?

     痔とは、肛門やその周辺に起こる病気の総称です。日本人の3人に1人は痔であるといわれています。痔は、「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう」の3つに大きく分かれ、外来患者の約8割を占めます。このうち、最も多いのが痔核です。

     

    痔核の症状と治療法について教えてください

     イボができる場所により、肛門の皮膚部分にできる「外痔核」と肛門の内側の粘膜にできる「内痔核」に分類されますが、最も頻度が高いのは内痔核です。

     肛門は、便やガスが無意識に漏れないように括約筋という筋肉で閉じられていますが、これだけでは不十分なため、肛門の出口から数センチのところに「クッション」と呼ばれる、水道の蛇口のゴム栓のような役割を担う部位があります。排便時のいきみなどでクッションが腫れ、本来あるべき位置からずれ落ちた状態が内痔核です。さらに、このクッションが肛門の外まで出てくる状態を「脱肛」といいます。

     内痔核の多くは、排便の回数や状態を整えたり、塗り薬や座薬で症状を抑えたりする保存治療で改善しますが、出血や脱肛の程度によっては外科的治療が必要になります。

     

    内痔核に対する外科的治療について教えてください

     かつては、内痔核ごと肛門粘膜部をすべて切除し、残った直腸側と皮膚を縫う手術が主流でしたが、術後の出血や痛み、肛門狭窄などのリスクがあり、術後に肛門の機能が損なわれるケースも少なくありませんでした。現在、専門病院の多くでは肛門機能の温存を重視した治療が行われています。

     現在の外科的療法では、近くに流入している動脈を結紮(けっさつ・縛ること)し、痔核を切除する結紮切除術が一般的となっていますが、より肛門の機能を重視した手術に「ACL法」があります。これは、ずれ落ちたクッションを本来あるべき位置に戻し、括約筋に固定する手術法です。クッションは元来必要なものですから、切り取るのではなく、「元の状態に戻す」というのがACL法の考え方です。術後の痛みを軽減でき、大量出血の可能性も少なく、入院期間の短縮が見込めます。

     「MuRAL法」も肛門機能を損なわない新しい手術として注目されています。これは、ずれ落ちたクッションを本来あるべき位置に戻した上で、痔核の原因となっている粘膜や血管を糸で縛って肛門の奥に引き込む術式です。ただ、まだ国内での症例数が少ないため、今後の治療成績の蓄積が期待されます。

     薬剤を内痔核に直接注射して痔核を縮小させる「ALTA(ジオン)注射療法」という治療もあります。メスを入れないため治療後の痛みが少なく、入院期間も短くて済みますが、すべての痔核に効果があるわけではなく、この治療に適しているかどうかを厳密に選択しなければ再発しやすいという特徴もあります。

     

    どんな治療を選ぶといいですか


     肛門が狭くなるなどのリスクをいかにゼロに近づけて、術後のQOL(生活の質)を保つか。大前提として、可能な限り肛門機能を温存できる治療法を選ぶことが大切です。

     治療の選択は、患者さんの年齢や肛門の状態、希望・要望、ライフスタイルなどを考慮して総合的に決定します。患者さん一人ひとりの病状と訴えに対し、最も適した治療を選ぶことが何よりも重要になります。

     病院によってできる治療法は違います。どんな病気に対してもそうですが、治療の選択肢が一つでも多いに越したことはありません。複数の治療法を手掛け、治療・術式の症例数のバランスが取れている病院を選ぶことも大切です。

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